社会課題の解決を商品化する


untitledNPOの多くが事業からの収益を活動の資金源としています。では、NPOが事業から収益を上げるためには、何が「売り物=商品」となるのでしょう。大きく5本の柱で考えてみます。

1)サービスの商品化
課題の解決につながるサービスの購入者は下記の2つの種類に分けられます。

① 課題解決の対象となる当事者
ミッションに掲げている社会の課題の解決の対象となる当事者から対価を得るものです。 たとえば、子育て支援団体による病児保育は、子どもが病気にかかると保育園では預かってもらえないという、働く母親にとって大きな課題を解決するために生まれたサービスですが、このサービスについては、当事者である母親が託児料金を払います。 また、高齢者への食事の宅配サービスなども当事者から対価を得て提供されています。 こうしたサービスは、受益者に支払い能力がある場合に成り立つものですが、介護保険事業など政策として提供されるサービスについては、対価の一部、あるいは全額が利用する当事者に代わって行政から支払われることもあります。

② 課題解決に賛同・共感した人
コミュニティカフェやコミュニティレストランは、地域コミュニティの再生というミッションに賛同する人が集う場で、来店者はそこで提供される飲食サービスに対して対価を払います。 オンライン英会話事業を通じてフィリピンの貧困問題の解決に取り組む団体の英語レッスンを受ける人は、単に安価な個人レッスンというだけではなく、その背景にあるフィリピンの若者の夢と自立を実現すミッションに共感していると考えられます。

2)モノの商品化 いわゆる「物販」にも2つのタイプがあります。
① ミッションと直結した商品
代表的なのは、途上国支援団体が、現地の人たちの自立支援活動のなかで生産されたモノ、例えば工芸品などをオンラインやイベントで売る場合です。環境団体がエコバッグやマイ箸を販売する、障がい者支援団体が作業所でつくられたクッキーを販売するというのも、このタイプです。

② 活動の資金調達を目的とした商品
団体のロゴ入りバックなどを販売したり、マスコットをプリントしたタオルやTシャツを売るなどして資金調達する団体も多々あります。企業と連携した寄付付き商品(商品の売り上げの一部が団体に寄付される)もこのタイプです。

3)場所の商品化
「NPOセンター」と呼ばれるような地域の中間支援組織の施設では、会議室などを時間貸しして収益をあげています。また、「インキュベーション・オフィス」として、デスク付きのブースを貸し出して社会的企業の支援をしている団体もあります。コミュニティカフェなどが、食事時間帯以外に、カフェを「習い事の教室」などに貸し出すのも、このタイプです。

4)イベントの商品化
大規模なチャリテイ・コンサートやシンポジウムなどから、地域のプレーパークの焼き芋大会まで、NPOが行うイベントへの参加費。また、海外の活動の現場を訪ねるスタディツアー参加費も、このタイプです。

5)情報の商品化
社会課題の解決の専門家としての知見は、貴重な情報として、十分に商品価値のあるものです。書籍にして販売する、セミナーを開催する、あるいは講師派遣依頼など、いろいろな形態があります。商品化によって収益を得ることと同時に、社会の課題についての啓発にもつながることで、NPOにとってはミッションとの整合性の高いものです。 最近は、企業なども社内研修にNPOから講師を招くことが増えています。これから進出する途上国で長年活動してきた団体から学ぶ、ワークライフ・バランスについて子育て支援団体の有識者から学ぶ、ハラスメント防止のために人権団体から学ぶなど、その専門性が評価されています。
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NPOが収益をあげようとして行う事業のほとんどは企業が行っているものと同じ内容です。「レストランを繁盛させる」ノウハウは、規模の違いこそあれ、地域のコミュニティレストランと大手チェーン店で共通するものでしょう。そこで、事業に際しては、営利企業のノウハウから学ぶという姿勢が必要になります。

その一方で、社会的な意義を考えると、商品やサービスを営利企業よりも低価格で提供しなくてはならないケースがあるのもNPOの特性です。例えば、ある社会課題についての啓発を目的に「映画上映会」を行なうとしたら、できるだけ多くの人たちに観てもらうためには、一般の映画館より入場料を低めに設定する必要があるでしょう。

逆に、NPOの商品ということで、一般価格よりも割高でも購入してもらえる場合もあります。障がい者の作業所でつくられたクッキーは、スーパーで売られているクッキーより値段が高かったりします。それでも、「あの子たちがつくったもの」ということで購入してもらえたりします。まさに、ミッションへの共感が購入行動につながるわけです。

そこで、社会課題の解決を「商品化」するなら、団体のミッションと、その事業の収益性の整合性が問われてきます。そして、NPOならではの価値、すなわち社会の課題の解決のための組織という特性を活かして、「共感」による購入やボランティアの「参加」協力を得ながら収益を上げていくことを考えなくてはなりません。