今回は、会員制度の中で生じる残念な場面、「退会」について考えてみます。一定期間ご支援くださった会員の退会・・・その残念な事態を受けても、ファンドレイザーたるもの、「災い転じて福となす」ことに努めたいものです。
さて、一言で「退会」といっても、その経緯には2種類あります。
1.会費納付しなかった人(自然消滅型)
メールや文書、時には電話で継続依頼されたにもかかわらず、継続、すなわち会費の納付をしない人。「会員継続しないでおこう」と思っている場合がほとんでですが、時には会員になったことすら忘れてしまっていたという人もいます。
いずれにせよ、会員継続依頼を受けていても、団体の会員規定で定められている一定期間を経ても会費納付をせず、会員資格の喪失に至るケースです。退会届は提出されず、多くの場合、「音信不通」の状態で会員名簿から除外されていきます。
2.退会届を出した人(意思表明型)
会員期限が切れる前に、あるいは会員継続依頼に対して、退会の意思をメールや文書などで伝えてくる人。その際に、「引っ越すので」とか、「仕事が変わったので」といった理由を伝えてくる場合と、理由は延べずに、「退会します」と通知してくる場合があります。また、何か大きな不満や怒りを感じて退会を通告してくる場合もあります。あまり多くはありませんが、「亡くなりましたので・・・」とご遺族から退会の連絡が来ることもあります。
では、上記の2つについて、どう対応したらいいのかを考えてみます。
1.会費納付をしなかった人(自然消滅型)
1)1か月、半年、1年経過といった時間軸できちんと管理
会員期限が切れた時、その1か月後、あるいは3か月後といった段階で、重ねて「継続依頼」を送ります。
会員のほとんどは自分の会員期限がいつなのかを認識していません。また、継続するつもりでも忙しさにかまけて納付をし忘れているということも多々ありますので、「継続依頼」はメールなどで何回か行う必要があります。
また、自動的な退会までには1年間、あるいは2年間などの猶予があっても、会報送付、参加費割引などの会員特典はそれ以前に一定期間が経過すると喪失するという規定を設けている団体もあります。その場合は、そのタイミングで念押しのメールを送るといいでしょう。「なんで会報が来ないのだろう?」「会員割引のつもりでイベント参加したのに・・」といったミス・コミュニケーションは防ぎたいものです。
こうした時間経過に応じたルールに基づいたコミュニケーションは、きちんとした会員管理システム(支援者データベース)が整っていれば、ルーティンワークの中で「粛々と」行うことができます。
2)退会の通知
継続依頼への反応がなく、会員規定で「退会」となる期限が来た会員に対しては、その時点で最後の「働きかけ」をします。その際には、過去に会員として支援してくれていたことへの感謝、団体の近況、さらなる支援を必要としていることなど伝えつつ、期限がきたことをはっきり伝えます。
3)退会後
自動的な退会処理の後は、メルマガなどコストのかからないコミュニケーション以外は停止し、データベース上に「過去の会員」として記録しておき、「潜在的支援者」として働きかけたい際の対象とすることになります。
2.退会届を出した人
1)引き留めるのは不可能
退会届が来たら、それを引き留めるというのは不可能だと考えていいでしょう。それなりの理由があって、誠意をもって届出を出されのですから、こちらもきちんとそれを受け止めます。
2)お礼を伝え、その際に退会理由を聞く。
お礼の出し方はメールか文書をおすすめします。長年の会員には直接電話でのお礼を伝えたくなりますが、「辞める言い訳」を聞き出すようなプレッシャーにもなりかねないと感じるからです。
また、「今後の参考にさせていただきたく、アンケートにご協力ください」という依頼も、メールなら、お礼の用意されたアンケートサイトにリンクで飛んでもらって選択肢で答えてもらうほうが気軽に協力してもらえます。
アンケートで聞きたいのは、「なんで退会するの?」の一点ですが、さすがにその質問だけではストレートすぎるので、「団体に期待すること」みたいなものを混ぜて、合計3問くらいの簡単なアンケートで答えてもらうといいでしょう。そうすれば、退会届の際に何らかの理由を伝えてきていても、重複感なく改めて回答してもらえます。
3)円満な退会でない場合
不満や怒りを明記したうえで退会を通告してきた場合は、電話や、場合によっては面会で、直接お詫びと説明をする必要があります。
大事なのは、しかるべき立場の人が丁寧に誤解を解くこと。SNSなどで誰もが情報発信できる時代に、誤解が拡散して団体の評判を落とすような結果は避けたいものです。
そして、データベースではその経緯がわかるようにしておかねばなりません。
退会届で退会した人はデータベース上に「過去の会員」として記録され、「潜在的支援者」として働きかけたい際の対象としますが、こういうケースではその対象から外すことも必要となります。
4)お亡くなりになったという連絡があったとき
これには、ご連絡くださった方に代表者名で「お悔み」を出します。「ご相続からご寄付を」とか「かわりにご支援ください」などと依頼するのは場違いですから我慢。ただ、いかに亡くなった方が団体に期待して応援してくださったか、感謝しているかを伝えることが、そういう可能性につながるかもしれません。
ただ、寄付額やこれまでの支援額は亡くなった方の「個人情報」ですので、それは伝えないこと。
5)ドアが開いていることを感じてもらう
お礼には、これからの連絡先(代表メールアドレス・電話番号など)を改めて伝えて「ドア」が開いている感を出します。「団体の活動に対するご指導、ご鞭撻、そしてご支援をこれからもよろしく!」というメッセージを伝えておきましょう。
そして・・・会員が特に理由はなく、なんとなく会費を滞納し続けて退会していくことは多々あります。しばらく滞納が続くと、あらためて納付するのも気が重かったり、面倒に感じたりするものです。そのためにも、会費を月額、あるいは年額でクレジットカードなどで自動引き落としで支払えるようにすることが求められます。
会員は生活者。買い物やその他の支払いがオンラインでできる時代に、なぜNPOの会費は銀行や郵便局に足を運ばないといけないのか・・・そう思われてしまう時代が来ています。
NPO向けの導入しやすい決済システムが登場していますので、ぜひ導入を検討して下さい。
会員に関しては下記もご参照ください。
■オンライン決済の導入については
http://fundraising-lab.jp/archives/750
■会員継続率を高めるためにやるべきこと
http://fundraising-lab.jp/archives/558