「一口」はいくらにしたらいい?

寄付集めの際に「一口いくら」という設定をすることが多々あります。なぜ「一口いくら」の設定が求められるのか、その一口は金額、選択肢、見せ方でどう設定したらいいのか考えてみます。

寄付者の気持ちになってみましょう。「寄付をお願いします!」と頼まれ「よし、寄付しよう!」って思った人が次に考えるのが「いくら寄付しようか・・」ということです。寄付には単価などないのですから、自由に金額を決めていいのですが、あまり寄付をすることに慣れていない人だったら、「一体いくら寄付したらいいのだろう?」と迷われたりします。そういう際に「一口xx円からおねがいいたします。」とあれば、考える基準となってあまり悩まずに行動に移せるでしょう。

ちょっと話が飛びますが、私達は「横並び」とか「相場感」をけっこう日常的に気にしているようです。たとえば、結婚のお祝い金などについて「いくら包む?」というようなことを、職場の同僚や親戚とたずねあったりしたこと、ありませんか?とりわけ、知人に寄付のお願い等され匿名でない寄付をする際には、同じような気持ちになったりするのではないでしょうか。そして、金額について迷っているうちに、ついつい後回しにしてしまい、結局寄付をしない結果になってしまうことだってあり得るのです。

そこで、多くの団体が寄付集めに際して「一口いくら」という設定をしていますが、では、その一口の金額はどう決めたらいいのでしょう?

寄付のハードルを下げるには「一口1000円からお願いします」でお願いすればいいようにも思われますが、それだけでいいのでしょうか。たとえば、もし、その団体の事業に強く共感して、しかも経済的に余裕があって、今すぐに10万円寄付してもいいなって思った人がいたとします。その人がこの表示を見て「100口」って申し込むのは、もしかしたら躊躇われるかもしれません。なんか、場違いな、検討はずれなことしているんじゃないかしらって。

そこで、いくつかの選択肢を設けることが必要になってきます。さすがに「松・竹・梅」ではあからさまなので、ネーミングも工夫してみて下さい。たとえば、「お月さまサポーター(一口3千円)、お星さまサポーター(一口5千円)、お日さまサポーター(一口1万円)」とか、「一口館長(1万円)、一口名誉館長(10万円)」みたいなのを聞いたことがありますが、これなら気持ち良く選択できそうです。

あるいは、一般的な寄付でしたら、振替え用紙やオンライン決済画面上に「1000 円、3000円、5000円、10000円、10000円以上(   円)」のような選択肢でチェックボックス等を用意して選択してもらってもいいかもしれません。

ポイントは、寄付をしようと思った人が金額について迷いながら考えているのを、「この金額で寄付しよう!」と肯定的に安心して決断していただけるように、単価感を示しつつ選択肢を用意しておくことではないでしょうか。

では、選択肢は多いほどいいのでしょうか?実はそうでもないのです。ある特定の商品が3種類並んでいるA店と、10種類以上の並んでいるB店とでは、A店の方がその売上を伸ばし、顧客満足度も高くなるのだそうです。選択肢が多すぎると決断しづらくなり、不親切に思われてしまうのでしょう。

また、心理学では「極端性回避」という考え方があって、ある特定の商品について、その選択肢がA(1000円)とB(3000円)の2種類しかない場合、それぞれの売り上げが半々になる傾向にあるそうですが、そこにC (5000円)を加えて3種類にすると、B(3000円)の売り上げが約6割を占めただけでなく、C(5000円)の売り上げも2割ほどに達したという実験結果があるそうです。

まさに、「松・竹・梅」のお寿司があった時に、無難そうだから「竹」にしようか、でも、せっかくなら「松」かな・・みたいな話です。 こうした「中間のもの選ぶ性質」も寄付金額に選択肢を設ける際に考慮したらよいと思います。