ファンドレイジングの体系を学ぶということ

認定ファンドレイザー®資格制度を運営している日本ファンドレイジング協会では、ファンドレイザーに求められる能力のひとつに、ファンドレイジングの体系的な知識とスキルを身につけることをあげています。分野や規模を超えたファンドレイジングの基本的な知識体系はどのような構成からなるものか、なぜそれを学ぶ必要なのか、考えてみます。

米国では50年以上前から「ファンドレイザー」が職業として認知されていて、その職能を身につける機会が大学や民間機関を通じて提供されていましたが、日本では、NPOの資金調達は団体内での試行錯誤のなかで、その団体なりの手法で行われてきました。ただ、より戦略的な計画を立て効率的に実行していくには、団体の規模、分野などを超えて活用できるノウハウや成功事例の共有が欠かせないという認識が高まり、6年前に日本ファンドレイジング協会が設立されました。ファンドレイジングに関するプラットフォームができたことで、知見と事例の共有が図られ、現在では各地でファンドレイジングセミナーが開催されるようになり、その集大成として認定ファンドレイザー®資格制度も生まれました。そうしたなかで、ファンドレイジングの知識体系も明確になってきました。

さて、「体系」というのは「整理ダンス」だと思います。衣類を「整理ダンス」にしまっておけば、必要に応じて取り出して着ることができますし、必要とする誰かに譲ることもできます。もし大きなひとつの箱にまとめて収納していたら、毎日全部を引っ掻き回して探すか、あるいは選ぶのを諦めて近くの服を着続けることになります。あるいは無駄な衣類を購入することも多くなるでしょう。ファンドレイジングも同じではないでしょうか。豊富な知識や経験も整理しておかないと、臨機応変に活用できませんし、他のスタッフに伝えることも困難です。また、自団体には何が必要なのかの見極めもできません。

知識の体系化とは、 ひとつの知識が全体の中でどこに位置するのか、 別の知識との関連がどうなっているかを整理してまとめあげることだと思います。まさに、四季折々の衣類をTPOや着こなしも考えて整理ダンスに収納していくような作業です。

では具体的にファンドレイジングの知識についての体系はどのような構成からなるのでしょうか。

日本ファンドレイジング協会の認定ファンドレイザー制度では、その必修研修で400ページからなるテキストブックが用意されています。

このテキストの内容(目次)は下記で公開されています。
http://jfra.jp/documents/cfr-acfr_outline.pdf

そこでは、ファンドレイジングについての知識を以下のように体系化して研修内容としています。

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*ちなみに、この「認定ファンドレイザー制度で学ぶ体系 ©日本ファンドレイジング協会」をはじめ、同協会の研修には、その骨組みとなる幾つかのチャートがあって、認定・准認定ファンドレイザーの有資格者は、それらを活用できるようになっています。有資格者が自団体のミーティングで、外部で講師を努める際に、共通の枠組みをもって、それを普及させていくことが重要だという考えからです。上のチャートもそのひとつです。

さて、上のチャートを見てみましょう。私達は、ともすればファンドレイジングに取り組む際に、「じゃあ、どんな寄付キャンペーンしようか?」とか、「助成金申請書ってどうしたらうまく書ける?」というような具体的なアクションについてばかり考えがちですが、それらは一番下の部分。ファンドレイジングの体系の中の一部分で、その前後の段階で押さえておくべきポイントや準備すべきことが沢山あるのです。

なかなか体系的に学ぶ研修に参加できなくても、NPOのファンドレイジングやマネジメントに関する図書などを読んで、自分なりに上記のような項目を「目次」のようにして、自団体の活動だけではなく、他団体の事例等も思い起こしながら、客観的にファンドレイジングについて考えてみてはどうでしょう。きっと、これまで蓄積してきた経験や知見が整理されて、「体系化」されていくと思います。(ファンドレイザー必読書TOP10もご参照ください。)

実は、米国と、ヨーロッパと、アジアで開催されたファンドレイジングについての会議やセミナーに参加したことがあるのですが、いずれの土地でも、その内容が基礎的な知識に関するものでも、ケーススタディでも、おおよそ共通の体系に基づいているということに気づきました。また、母国語をこよなく愛すフランスでも、ファンドレイジングについては「fundraising」という英語表記を厭わないとも聞きました。社会課題を人々に知らせ、その解決に参画してもらうことで資金調達を行うファンドレイザーは、世界中どこでも、「NPOと市民の架け橋」となって社会を良くしていくために働く仲間なのだとも感じました。それ故に、その知識も積極的に共有され、ひとつの体系に収れんされてきたのでしょう。

KIMG0654先日開催された「ファンドレイジング・日本2015」の基調講演に来日された、国際的ファンドレイザー認証機関CFRE(Certified FundraisingExecutives)Internationaの会長のエヴァ・アルドリッヒさんとお話しする機会があったのですが、彼女は、学ぶだけでなく、「学び続ける」ことが大事だと言われました。ファンドレイジングについての新しいツールや方法も生まれています。20年前には誰も「クラウドファンディング」なんて想像できなかったでしょう。人々の生活や価値観も変化していくものです。変化する社会のなかで、団体自体を「適応・進化」させながら支援者拡大を図るためには自己研鑽がかかせないということです。あらためて身の引き締まる思いをしました。

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