ファンドレイジングで社会を変えられるか?


2017年の仕事を振り返る中で、各地での私の講演資料などを見返していて、「ファンドレイジングで社会を変えていきましょう!」という文言を頻繁に使っていることに気がつきました。

punto-interrogativo-2ファンドレイジングをテーマに仕事をし始めてから10年あまりがたち、ファンドレイジングが社会を、未来をより良いものにすると確信してきましたが、年の瀬にふと立ち止まって2つのことを考えました。1.ファンドレイジングで社会を変えられるのか?と、2.ファンドレイジングの主役は誰か?・・・。

1.ファンドレイジングで社会を変えられるか?

結論から言うと、私の答えは「イエス」です。その理由は下記です。

組織基盤を維持して、安定的な活動、持続的な活動、さらに活動を発展させるためには活動資金が必要です。よって、団体の活動資金を調達するファンドレイジングは、社会をよりよく変えていくために不可欠な活動です。

でも、それ以上に、ファンドレイジングには社会の課題解決を促進する大きな機能があります。それはファンドレイジングの重要なプロセスの「伝える」ことがもたらすものです。

ファンドレイジングに際しては、「何のために必要なお金なのか」をきちんと伝える必要があります。それが伝わらなくては、誰も自分のお金を提供してはくれないでしょう。その伝える過程が社会に対する「気づき」と「変化」をもたらします。

私が「ファンドレイジングが社会を変える」と実感したのは、初めてNPOで働いた時でした。担当した仕事は視覚障害者への録音図書のネット配信。図書といっても文芸作品ではなく、週刊誌の記事のような、「日々提供されている情報」を配信していくプロジェクトでした。当時、インターネットが普及し始め、「読み上げソフト」によって視覚障害者がパソコンを駆使して情報収集と発信を始めた頃でした。そのプロジェクトのために寄付や協賛を依頼する、すなわちファンドレイジングを行なっても、皆がお金を出してくれるとは限りません。むしろ出していただけないケースの方が圧倒的に多いでした。

それでも、お願いの際に出会った人たちの多くが、視覚障害者の情報格差の問題や彼らの可能性について理解を深めてくれるのを実感しました。視覚障害者が大学に行ったり、企業で働いていることすら知らなかった人もいました。「なんで、ラッシュアワーに白杖で駅を歩いているのか、危ないからよせばいいのにと思っていましたが、普通にお仕事されたりしているのですね。」、「点字ブロックなんて実際役に立っているのかって疑問に思っていましたが、あれがあるから一人で外出できるのですね。」、などとにおっしゃった人もいました。「パソコンでメール使えるようになって、初めてラブレター書いた。」と言う視覚障害の女性の話を聞いて涙された企業担当者さんもいました。

視覚障害者の社会参加には必要なサポートがあること、そのサポートがあれば晴眼者と同じように情報を得ながら、人と付き合い、勉強や仕事をして生活していけることを理解してくれる人が増えれば、きっと視覚障害者を取り巻く社会状況は良い方向に変わっていくと感じました。ファンドレイジングに苦労しながらも、一つ一つのお願いが社会を変えていくことの一助になると確信した次第です。ファンドレイジングは単なる活動資金集めではなく、社会を変えていくものなのです。

2.ファンドレイジングの主役は誰か

「ファンドレイジングが社会を変える」と申しました。では、「ファンドレイジングをする人(=ファンドレイザー) がファンドレイジングの主役」なのでしょうか?

私の答えは「ノー」です。

「ファンドレイジングで社会を変えていきましょう!」と言い続けていますが、社会を変える主役はファンドレイザーではないと思っています。ファンドレイザーは、あくまでも「脇役」です。

では、ファンドレイジングにおける主役は誰でしょう?

主役は二人います。

一人目の主役は、「提供者」。すなわち寄付者だと考えます。社会貢献したいと思いながら、その機会を模索している人たちが主役。その人たちがファンドレイザーの働きかけによって、「気づいて、共感して、納得して、信頼して」、そして「寄付」という行動を起こすというドラマの主役です。

少しファンドレイジングの意味の枠組みを広げて考えると、寄付者だけではなく、会員、助成財団、団体の提供するサービスや物品の購入者も含めて、「資金提供者」が主役だと言えます。そして、ファンドレイザーは、主役である資金を提供する人たちが、社会貢献の舞台の上で引き立つように支える、「脇役」です。

そして、もう一人の主役が、受益者(=課題の当事者)。この人たちの多くは表舞台には出てきません。そこで、ファンドレイザーは脇役として、「こんなことに困っている人がいる」、「こうすれば社会は良くなる」、ということを観客(=社会の人々)に訴えます。そして、観客が、社会の課題の中で苦しむ人たちに心を寄せて、課題解決へ取り組む団体の活動を「素晴らしい!」と思い、そこに思いを託して行動する主役たる寄付者の姿を見て、「自分もそうなりたい!」と思う・・・こうなったら、舞台は大成功となります。

今年も、私が出会ったファンドレイザーの方々の多くが、市民セクターで「主役級」の方達でした。それでも、ファンドレイザーとして、日本の社会貢献の舞台での名脇役に徹して、寄付者を大切にして受益者のために尽力なさっているのを目の当たりにして、こういう方々こそが、「社会を変えるファンドレイジング」の王道を進む方々なのだと思い至った次第です。