支援者との関係性を構築して、それを持続的に、さらに深めていくために何をすべきかを考えていて、「MITAS=満たすの法則」を見つけました!「MITAS」は、「Moved-Interest-Trust-Action-Share」 の頭文字です。この5つの語の意味するところを解説します。
1.Moved (感動)
心を動かされること、すなわち感動することは共感の入り口です。私たちは理屈抜きで「大変だ」、「かわいそう」、「いいなあ」というような「気持ち」を抱いて、そこからその背景にある事象への関心を抱くようになります。
そのいい例がテレビのコマーシャルです。メタボなお腹にため息をつく人を見て、「こんなになったら大変だ!」と思ったり、きれいな女優さんの肌のクローズアップで「いいなあ」と思ったりします。
NPOの活動についても、その活動のもととなる社会の課題について、誰かの悲しみ、苦しみ、悲惨な光景・・といったネガティブなものや、活動によってもたらされた誰かの笑顔、美しい光景・・といったポジティブなもの、そういうものに私たちは心を動かされます。
支援者が最初に「私にも何かできることはないか?」と思い至るきっかけは、こうした「感動」にあると思います。
感動に必要なのは「ストーリー」です。
アメリカでプロのストーリーテラーとして活躍するケンダル・ヘイブン氏が、ストーリーとは、「登場人物が困難を乗り越えて重要な目的を達成するまでの奮闘を詳細に描いた叙述」と定義した上で、「ストーリーは言語が生まれる前から存在して、人間の思考の基本を成してきた」と述べています。ということは、文字通り「百聞は一見に如かず」というように、一枚の写真、短い動画が私たちの脳にストーリーをつたえることもできるということです。ある意味、見たものを自分でストーリー化してそれに感動できるということです。
NPOにとって、団体の活動をストーリーとして伝えること、時にはそれを端的に表す写真、動画が重要だと思われます。
2.Interest (関心)
感動して心が動かされると・・・心は対象に引き寄せられていきます。それが関心を抱くということかもしれません。
そして、先のコマーシャルの例でいえば、「メタボ解消に何が必要なんだろう」「美しい肌にはどうすればいいのだろう」という関心を抱くことになります。そして、「そのために、これがいいですよ!」と商品の紹介となるわけです。視聴者は「なるほど、これか・・」と考え始めます。
NPOの場合は、「この課題を解決するために、こういう活動をしています」ということを明確に示すことで、「なるほど、こういう活動が社会には必要なのだ。では、自分にできることは何だろう・・」と考えてもらうことになります。
必要なのは「適切な情報」です。「知りたい」と思うことにわかりやすく答える情報が提供されていないと、「動かされた心」は行き場を失い、感動も関心も消えてしまいます。
3.Trust(信頼)
そして信頼。先のコマーシャルでも、「なんか疑わしいな」と思ったら、商品購入には至りません。
「Action(行動)」につなげるには、信頼してもらわないとなりません。
ここで必要なのが、「報告」。活動の成果を表す事業報告、透明性のある会計報告がきちんと提供されていないと信頼してもらえません。
4.Action(行動)
ここで初めて、行動してもらえることになります。
テレビコマーシャルの例ならその商品やサービスを購入するという「行動」。NPOなら、寄付やボランティアという形で団体を支援するという「行動」です。
ファンドレイジングでいうところの「潜在的支援者」が「支援者」になる瞬間です。
ここで大切なのは「機会」がきちんと提供されていることです。商品でいえば、お店に行っても売っていない・・ということでは、買ってもらえません。
NPOの場合、寄付の仕方、ボランティア参加の方法などがウェブなどでわかりやすく紹介されていることが必要です。寄付しようと思ったのに、その方法が見つからないというのでは、「やめた・・」という結果になってしまいます。また、「ご寄付は一口1万円から」、「会費は年額2万円」というメニューだけでは、5千円くらいならと思っていた人に、こちらも「やめた」と思わせてしまいます。「ボランティアは毎週水曜日の午後6時に集合」だけというのでも、「こりゃ無理だ」となってしまいます。
支援についての選択肢をいくつか用意してActionの機会を提供することが大切です。
5.Share(共有)
支援者との関係性が深まると「誰かに伝えてくれる」ことが始まります。文字通り、Facebookのシェアのような「口コミ」での広がりは、団体が直接アクセスできていない関心層への貴重な働きかけとなります。
商品なら「広告見て買ったら、ほんと、おススメよ」と話す、あるいはSNSで紹介するといったことで、それを見た人たちに購入の可能性が広がっていきます。
「xxさんが良いっていうから・・」は、それ自体がストーリーとなって、誰かのInterest(関心)につながります。
NPOでも、支援者が新しい支援者を「連れて来てくれる」ことが多々あります。
では、Share してもらうには何が必要でしょう。それは伝えるための「コンテンツ」です。商品なら、実物を見せるのが一番ですが、常に持ち運んでいるわけではないですし、ネット上のShareなら、それを紹介しているサイトのURLなどがなければ、「これ、いいわよ」と言ってもわかってもらえません。
NPOなら、団体のサイトをきちんと整えておくこと、ダウンロードできる団体案内パンフレットや事業報告書があることも必要ですが、何よりも、「こういう団体なのよ」と簡単に伝えられるメッセージを用意して、支援者に届けておく必要があります。
具体的には、メルマガや支援者へのメールの最後の署名の部分に、「私たちは・・・・」という簡単な団体紹介メッセージを入れておく、ホームページのわかりやすいところに団体を簡単に紹介する文言が掲載されていると、それを使って伝えてもらえます。
あるいは、郵送物に、「よろしかったらお知り合いにも・・」とチラシなど余分に封入して送る、さらには、会員さんに団体名の入った名刺を使ってもらう・・・こういう「伝えるためのツール」も有効だと思われます。
MITASによって団体への共感者が生まれ、支援という行動から、さらに支援者の拡大に貢献してもらえるような支援者レベルの高まりが生まれます。
ここで大事なのは、MITASは階段状の「登っていくもの」ではなく、左の図のようにくりかえしの中でサイクルの生み出す「渦」が周囲を巻き込みながら上昇していく「スパイラルアップ」をもたらすということです。
そのためには、既存の支援者に新しいストーリーを伝えて、あらためて感動(Moved)してもらい、新しい情報で関心(Interest)を深めてもらい、きちんとした報告と情報開示によって信頼度(Trust)を高め、寄付などの行動(Action)をくりかえしてもらい、そして団体を社会に知らせる(Share)人になっていただくように努めていきたいものです。
寄付者との関係性を構築して、それを持続的に、さらに深めていくために、常に寄付者の気持ちに応えて満たしていく、「MITAS=満たすの法則」、ファンドレイジングに活かしていただけたらと思います。