ボランティア・ファンドレイザー

多くの人の「参加」によって社会を変えていこうとするNPOでは活動の様々な場面にボランティアが参加していますが、ボランティア・ファンドレイザーとして資金調達に参加する人たちもおられます。本業で培った営業力で企業協賛の依頼に出向く、自身のネットワークを活かして寄付依頼をする・・そういうボランティア・ファンドレイザーに支えられているNPOは珍しくありません。

一例を挙げると、途上国の教育支援を行っているNPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパンでは、年一回の大規模なチャリティパーティや、各地で折々開催される、飲み物1杯が現地語の本1冊になるという「Beers for Books(ビアーズ・フォー・ブックス)」のイベントが、全てボランティア・ファンドレイザーたちによって開催されています。実は、そのチャリティパーティに参加したことがあり、オークションとディナーチケットによって一晩で2億円ほどを集めたのを目の当たりにして驚きましたが、その金額もさることながら、企画、開催運営、チケット販売、企業からのオークション商品集めなど、全てがボランティアによって行われていることに驚かされました。

「ファンドレイザー」というのは、支援者や潜在的な支援者に対面する立場で、ある意味では団体の「顔」として前面に出る機会をもつ大切な役どころです。それだけに、ボランティアという立場でファンドレイジングに参画してもらうには、それなりの留意すべき点もあるでしょう。

そこで、ボランティア・ファンドレイザーとして活躍してもらう際のポイントを5つ考えました。

  1. 活動(業務)内容と責任の範囲の明確化

ボランティアに対しては、「何のために、誰に対して、いつ、どこで、どうやって、いくら集めるのか」といった事項をきちんと伝えておかなくてはなりません。ボランティアの自主企画でおこなうファンドレイジングであっても、団体の「顔」として支援者と関わる訳ですから、こうした事項は企画の段階から事務局ときちんと共有してすすめてもらう必要があります。

その上で、責任の範囲やそれに伴う権限なども明確にしておくことで、ボランティアも安心してファンドレイジングに取り組めるのだと思います。「とにかく、いっぱい寄付を集めてきて下さい」というような依頼の仕方では、ボランティアは途方に暮れる、あるいは誤った手法をとってしまうといったことにもなりかね、結果的には支援者をふやせないどころか、信用を失うことにもなりかねません。

また、細かいことですが、団体名での名刺をきちんと用意する、ウェブ上でボランティア・ファンドレイザーを紹介しておくことも、円滑な渉外活動には必要です。

  1. 事務局との「ほう・れん・そう」

支援依頼先からの問い合わせや支援者対応を適切に行っていくためには、事務局との「報告・連絡・相談=ほう・れん・そう」を密にする必要があります。また、進捗や成果の報告もファンドレイジング計画を実行していく上で不可欠です。毎日、出勤する立場でないボランティアゆえに、「ほう・れん・そう」の徹底が求められます。

  1. 倫理規定の遵守

人様のお金を取り扱うだけに、というより「善意」を頂く者として倫理感が求められます。ファンドレイジングに際して、きちんと倫理を守る姿勢を明文化したものを用意している団体なら、それを守ることを宣誓書などで確認してもらうことで、対外的な信頼度も増します。また、日本ファンドレイジング協会が国際標準に準じて策定した「ファンドレイジング行動基準」もありますので、ご活用ください。http://jfra.jp/news/1641

ファンドレイジングは単に活動資金を集めることではなく、資金を募る過程で、共感の輪が広がって、解決のための寄付やボランティアといった支援者が増えて、社会の課題解決の仲間を増やすものです。ボランティア・ファンドレイザーにも、倫理を重んじる誠実さと誇りを持ってその役目を果たしてもらいたいと思います。

4.  モチベーションの維持

ファンドレイジングは「やれば必ずうまくいく」とは限らず、目標額を達成することも容易ではありません。うまくいかない時には自信を失ったり孤独感に苛まれたりするものです。そこで、ボランティアとして「がんばろう!」という気持ちを維持してもらうためには、ボランティアチームとして、あるいは事務局スタッフと定期的に集まる場を設けて、「個人のノルマ」ではなく「チームとしての目標」という認識を持ってもらうと良いと思います。また、金額以外の指標、たとえば団体パンフレットを手にしてもらえた人の数というような指標も成果とすることで達成感を持ってもらえるかもしれません。そして、感謝の意を伝え続けることも大切です。仲間感が強くなると「当たり前」のように思えてきたりもしがちですが、ボランティアは支援者。それを忘れてはなりません。

5.  スキルの向上

ファンドレイジングを効果的に行うために、そのノウハウを学びスキルを向上させる必要があり、学びを得ることがモチベーションもたかめてくれます。ボランティア・ファンドレイザーのためにも、団体内部でのファンドレイジングに関する勉強会や外部講師を迎えての研修の開催、「ファンドレイジング・日本」のような外部研修やイベントへの参加といった機会をぜひ設けて下さい。

私も団体内研修の講師を務めることがありますが(詳細はこちら)、共通の目的と土俵をもったメンバーが集まって学び、考えることで、新しいアイディアが生まれたり、モチベーションが高まったり、一体感の醸成がはかられたりする場となっています。

名称未設定最後に・・・「ラボの仲間」の小川宏さんは、現在は独立されましたが、長年、大企業に勤務しながら、その営業スキルを活かしたボランティア・ファンドレイザーとして、いくつかのNPOのファンドレイジングに貢献しておられました。そのブログ「リョウリツ」の記事のひとつ、「なぜプロボノをすると幸福感を感じるのか。」を読むと、協力してくれる人たちのキモチがよくわかります。http://probono-ogawa.com/?p=704 ぜひ、ご参照ください。