ファンドレイジングの具体的な計画を策定する際、まず、「誰を対象にして寄付を募るか?」ということを考え、対象範囲をある程度絞り込んだ効率的なキャンペーンを展開する、あるいは一つのキャンペーンでも支援者層ごとに異なる訴求や依頼の方法を検討する必要が出てきます。そのための準備として、Step2では、既存の寄付者と潜在的寄付者の分析を行います。
既存・潜在的寄付者については以下の2つの方法で分析してみて下さい。
1)支援度による「支援者ピラミッド」の作成
これまでに寄付をしてくれた人たちは、すでに団体のよき理解者です。きちんとした報告や感謝の意が伝わっていれば、団体との関係性はさらに深まってきているはずです。あらたに支援を募る場合、まずはその方たちにお願いするといいでしょう。
同時に、支援をしてくれる人達の支援レベルを引き上げてもいきたいものです。そのために、既存の寄付者が「どんな人たち」なのかを分析して下記のような「支援者ピラミッド」にマッピングしてみてください。下図は一例ですので、自団体にあわせた構造で「ピラミッド」を作成してみて、その各階層に「どんな人たちが何人くらいいるのか」を考えていきます。
ちなみに、この「ドナーピラミッド」の考え方は万国共通のファンドレイジングの考え方で英語で「donor pyramid」と画像検索するといろいろな発想で構成されたピラミッドを見ることが出来ます。いちど世界のdonor pyramidを眺めてみて下さい♬
これをもとにすれば、ファンドレイジングを行う際にどの層に、どういうアプローチをするかを考えることが可能になります。Step4で行う、「コミュニケーションの方法や内容の選択」に、この分析は不可欠なステップです。
例えば、寄付をしてくれる、あるいは新規入会してくれるのが、年一回のチャリティーコンサートの参加者に集中するとしたら、コンサート会場で積極的に寄付や入会を受け付けるようにする…といった具体的な計画につなげることができます。
また、支援者拡大には新規の支援者へのアプローチもしなくてはなりません、そこで、重要なのが、「潜在的な寄付者」がどのような人たちかを見極めておくことです。「まだ見ぬ支援者はどんな人たちか」をできるだけ具体的にイメージしてみましょう。そして、そういう人たちにアクセスできる方法を考えて実行することで、「潜在的な寄付者」が「寄付者」に変わる可能性が高まります。
仮に、子どもの貧困問題に取り組む団体が、「比較的経済的に余裕があり孫の成長を楽しみにしている年配の女性」を潜在的な寄付者と設定したら、そういう人たちが集まるところを探して、チラシを置いてもらう、話しに行くことを試みる必要があります。さらに、年金が年6回偶数月の15日に給付されるというような点も寄付キャンペーン開始の際に考慮した方がいいのかも知れません。
さらに、その潜在的な支援者を増やすための努力もしないとなりません。NPOは社会課題の解決や受益者のためにたゆまぬ努力を続けています。ただ、その過程で、ともすれば無関心な人たちを「どうせ理解してくれない人たち」とみなして、そういう人たちへの働きかけを諦めてしまいがちです。でも、それでは団体の支援者が増えないばかりか、その社会的な課題への社会的な認知や解決への協力の輪を広げていくことはできません。そこで、広報活動を通じて広く社会との接点を増やして、今すぐ支援者とならない人たちに対しても共感を求めていくことが必要となります。それによって、潜在的支援者層が拡大して、支援者拡大につながるのです。
2)支援額(ドナーレンジチャート)
これは、文字通り「いくら寄付してくれる人が何人いたか」を下記のような表にしてみることです。
金額によってグループ分けができるようになったら、それを活用して、既存の寄付者のどの層の何人位の人を対象にして、達成率をどのくらいとして、目標額はいくらで、どういうやり方で支援を求めるのか…といった具体的な計画を立てることができるようになります。
また、寄付額に応じたフォローがきちんとできているかを見直すこともできます。10万円の寄付をしてもらうのと3千円の寄付をしてもらうのでは、集め方だけではなく、御礼の仕方も違ってくるはずです。多額の寄付をしてくれた人たちに対して、少額寄付者と同じようなお礼や報告をしてきたとしたら、これは見直した方がよいでしょう。
NPOにとって、寄付をしてくれる人は多ければ多いほどいいに決まっています。「誰に寄付してもらいたい?」と聞かれたら、「できるだけ多くの人に!」となります。しかし、こうした分析によって、はじめて、効果的な寄付集めの方法が具体的に考えられ、寄付集めを成功に導くことできるようになるのだと思います。