寄付集め7つのステップ「Step 1 組織の潜在力の棚卸し」

「寄付集め7つのステップ」は戦略的な寄付集めの7つのプロセスとそれをサイクルとしてまわしながらファンドレイジングを実施していこうというものです。今日から7日間連続で7つのステップをワンステップごと解説していきます。今日はその最初のステップ「組織の潜在力の棚卸し」。まずは団体のもっている資源と実力をまずは棚卸しすることから始めましょう。

実は、海外でも主に「Fundraising Cycle」という表現で5〜7のステップで解説されています。検索すると海外の文献等でいろいろ出てきます。画像検索してみると一覧できて興味深いのですが、現状分析して、企画を立てて、実行して、寄付者フォローをして、評価をして次につなげる・・・という基本的な考え方に大きな差はないように思われます。

名称未設定

ここでは、日本ファンドレイジング協会が提唱する「7つのステップ」理論を解説していきます。余談ですが、私は、日本ファンドレイジング協会の設立直後までは「6つのステップ」で解説していました。その頃の資料等をお持ちの方もおられると思います。大きな違いはないのですが、ステップをひとつ増やすことでより丁寧な考え方になり、その後は「7つ」に統一しています。

日本ファンドレイジング協会「認定ファンドレイザー必修研修テキスト」より

日本ファンドレイジング協会「認定ファンドレイザー必修研修テキスト」より

Step 1 組織の潜在力の棚卸し
最初のステップ「組織の潜在力の棚卸し」の段階でするべきことを3つあげてみます。

1)自団体の組織診断

これが、組織の潜在力の棚卸し作業となります。限られた資源でファンドレイジングすることが求められるNPOだからこそ、それを最大限に活用するためにも、まずは団体の状況をきちんと把握しないとなりません。

その方法としては、文字通りファンドレイジングをしていく上で必要となる経営資源の棚卸しをする手法と、より広範囲に団体の組織力全体を診断してみる方法があります。

経営資源の棚卸しついては、以下のような具体的にな項目について、「どんな状況か(ファンドレイジングを行っていく際に十分なのか否か)」「ファンドレイジングにどう活用できるか」の視点でチェックをしてみて下さい。そして、足りているものはいかに活用していくか、足りないものはどう補ったらいいのか、どう確保したらいいのか改善策を考える必要があります。以下に項目リストの例をあげておきます。

—理事会
ー名簿などの支援者情報管理
ー財務状況
ー人材(職員・ボランティア)
ー支援者(会員・寄付者・ボランティアなど)
—ネットワーク(広報チャンネル・機会)
ー広報のための各種ツール
ー事業の実績

もうひとつ、組織診断の方法としておススメしたいものがあります。「“エクセレントNPO”をめざそう市民会議」が公開している「33の評価基準」です。ファンドレイジングのためだけでなく、組織全体をを見つめ直すことも時には大切なことかと思います。33項目は「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の3つの視点から構成されています。この基準作成に尽力された田中弥生氏の論文が下記に公開されていて、「参考資料」では33項目すべての説明が出ていますので、ご覧になって下さい。

「エクセレントNPO基準­〜課題解決としての評価」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoes/11/1/11_1_3/_pdf

また、詳細は下記のブックレットで解説されています。NPOとはどうあるべきか…を考えるときに参考になりますので、おススメです。
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2)対外的に発信するメッセージの確認

団体のメンバーは、代表理事であれ、入職したばかりのスタッフであれ、外部から見たら、それぞれが団体を表す「顔」です。ですから、外部に対して自団体をきちんと、統一した内容で語ることができなくてはなりません。そこで、「自分たちについて」「自分たちの目指すものについて」きちんと言語化して共有しておく必要があります。そのために次のような用紙を使ってワークショップをして備えてはどうでしょう。スタッフ全員がこうした「トーク」ができるとファンドレイジングの可能性を高めます。
トーク画像3)寄付者志向の団体になる意思の統一

ファンドレイジングで成果をあげるには、その重要性を組織全体で認識していることが大切です。NPOにおいては、ともすれば、課題解決事業にのみ注目され、ファンドレイジングは「裏方さん」と捉えられがちですが、NPOにとってファンドレイジングとは、単なる資金調達の手段ではなく、人々に社会の課題を伝え、共感を呼び覚まし、寄付によって課題解決に参加してもらうという、それ自体がミッション達成につながる重要な活動です。まず、そのことを組織内で認識してください。

そしてその認識を実行するために、すべてのスタッフが何らかの形でファンドレイジングに参加する機会をもちましょう。東日本大震災の被災地で日々復興支援活動に従事しているスタッフであっても、支援者向けニュースレターのためのメッセージや活動現場の写真を送る、FacebookやTwitterで発信する、活動報告会で話してもらうといった形でファンドレイジングのための活動をしてもらうことが可能です。

事務局にかかってきた電話への応対ひとつが、あるいはイベント会場でのボランティアの小さな言動が、それまで重ねてきたファンドレイジングの努力を水の泡としてしまうようなこともあります。支援者との良好な関係づくりをめざして、皆でファンドレイジングに取り組んでいこうという団体内での意思の統一が重要だと思われます。