コンテンツマーケティングで「見つけてもらえるNPO」になる

「コンテンツマーケティング」という言葉をよく聞きますが、このマーケティング手法は、潜在的な支援者との接点を結ぶという点でファンドレイジングにも有効だと思います。

日本におけるコンテンツマーケティングの第一人者で、ベストセラー「商品を売るな」の著者、イノーバ代表取締役社長の宗像淳さんは、その著書のサブタイトルを「コンテンツマーケティングで『見つけてもらう』仕組みをつくる」としています。では、「見つけてもらうNPO」になるには、どうしたらいいのでしょう。

宗像淳さんの「商品を売るな」の冒頭には、「コンテンツマーケティングとは、見込み客をウェブサイトに引き付け、資料請求や商品サービスの申し込みを行ってもらうマーケティングの手法だ」と書かれています。

また、米国のコンテンツマーケティングの第一人者、ジョー・ピュリッジ氏に「エピック・コンテンツマーケティング」には、「コンテンツマーケティングとは、有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、ターゲット・オーディエンスを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントをつくり出すためのマーケティングおよびビジネス手法を指す。その目的は、収益につながる顧客の行動の促進である。」とあります。

この「見込み客」や「収益につながる顧客」という文言を、「潜在的寄付者(潜在的支援者)」に置き換え、「商品サービスの申し込み」「顧客の行動の促進」を「寄付の申し込み」「参加や支援行動の促進」と置き換えると、まさにNPOがファンドレイジングで行うことと合致します。

NPOが社会から共感を得て支援を得るためには、自団体の取り組む社会的課題とその解決策について知ってもらわなければなりません。そうは言っても、テレビ・新聞・雑誌などのマスメディアを通じて不特定多数を対象に情報を提供するのはコストがかかりすぎ現実的ではありません。あるいは街頭でチラシを配っても、ゴミ箱に直行という結果になりかねません。

他方、その団体の存在は知らずとも、その団体の取り組む社会の課題に関心のある人たちは、けっこういるはずです。まだ出会えていない支援者・・そういう人たちを潜在的な支援者と呼んだりしますが、その人たちは団体からの情報に関心を抱き、共感してくれ、支援してくれる可能性が高い人たちです。ただ、そういう人たちを団体側から探しあてるのは容易ではありません。

そこで、コンテンツマーケティングで、潜在的支援者に「見つけてもらう」のです。

具体的には下記のようなステップがあると思われます。

1.発信のためのメディアを用意する

情報にメリットを感じる潜在的支援者に自らの意思で情報を取得してもらえる場としては、検索で「見つけてもらえる」ホームページやブログが有効で、しかも安価。特にブログは定期的な更新によってコンテンツを蓄積することができることからコンテンツマーケティングに有効だと言われています。「はてな」や「Ameba」のようなITの知識が無くても無料ですぐに利用できるブログサービスもあります。有料でも、月額1500円程度で運営できるWordpressのようなブログ用のCMS(コンテンツ管理システム)を導入すればドメインも取れますし、お問い合わせフォームやメルマガ登録、アクセス解析などの機能も盛り込めるようになります。基本的な「団体概要」、「事業内容」などの項目は固定ページで作成できるので、「ホームページ風」のサイトが構築できます。このファンドレイジング・ラボもWordpressを使っています。

2.見つけてもらいたい」潜在的支援者層を想定する

既存の支援者(会員や寄付者)を分析して、自団体の取り組む課題に関心を持っているのはどのような人たちかを見極めておかなくてはなりません。そして、その中のどの層を対象にするのかを決めます。環境団体であれば、環境ビジネスにとりくむ企業の社員、大学で環境問題を学ぶ学生、エコライフこそがファッショナブルだと考える主婦・・いろいろな関心層があると思われますが、それぞれに求めている情報(コンテンツ)が違うはずです。対象を設定しておけば、その人たちをイメージした「的を得た」内容で提供できます。

3.発信する

自団体の活動を通じて蓄積された知見を、わかりやすい文章、画像、動画等で情報発信していきます。この時に忘れてはならないのが、「伝えたいことを発信する」のではなく、前項で想定した「相手」の役に立つことを発信することです。あくまでも、対象となる関心層を引き寄せるための情報で、団体への共感を訴えるのは「その後」です。

たとえば、環境団体がエコライフに関心のある若い主婦を対象にコンテンツを提供するとしたら、話題のエコグッズや節電(=節約)の工夫などをトピックにすることで、見つけてもらうことが最初の目的で、団体概要や活動をアピールするのは、メルマガ購読者になってもらってからかと思います。

また、情報発信に際しては、「見つけてもらう」ための工夫も大切です。SEO(Search Engine Optimization)対策です。ネットで「SEO」と検索すると、それこそたくさんのコンテンツに出会えます。どのようなタイトルを付けたらいいのか、どういうキイワードを入れておくべきかも工夫のしどころです。

アクセスしてくれた人との双方向での関係性を構築するためには、メルマガ登録や、フォーム入力によって無料でダウンロードできる冊子などを用意しておくことも有効です。

そして、投稿記事にソーシャルメディアボタンを付けてFacebook やTwitterで拡散してもらうようにしましょう。ソーシャルメディアの普及で、発信者になりたい人が増えています。貴重な情報、ユニークなコンテンツであればあるほど、人は「伝えたく」なるものです。この「3分間ファンドレイジング講座」の各記事の上下にもFacebookとTwitterのボタンをつけています。ぜひシェアをお願いいたします♬

4.検証する

「どれだけ見つけてもらえた」をきちんと検証します。検証するためには無料のアクセス解析ツールGoogle Analytics(アナリティクス)が便利です。ページ閲覧数、閲覧者数、滞在時間などを確認できます。また、ソーシャルメディアのフォロワー数やシェア数なども指標となります。

なお、自団体の発信力を相対的にチェックするためには、日本ファンドレイジング協会が外務省の委託で実施した「企業・個人の視点からみたNGO連携についての意識調査(2013年)」をご参照ください。この報告書では、NPOの発信力を数値化して、上位25%に入るラインを「NGO 発信力ベンチマーク」として公開しています。こちらも参考にしてみて下さい。下記の報告書の28ページす。
「企業・個人の視点からみたNGO連携についての意識調査(2013年)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/houkokusho/pdfs/2013_03_report.pdf

コンテンツマーケティングの手法で支援者拡大を図ることは、社会課題への共感を得るためのきっかけづくりに有効だと思います。社会を変えるためのオピニオンリーダーとなるためにも、「見つけてもらう」工夫をしたいものです。

コンテンツマーケティングについて詳しく知りたい方には、宗像 淳さんの著書がおススメです。[amazonjs asin=”4822273903″ locale=”JP” title=”商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる”]