ファンドレイジング コストから目をそらさない!


日本ファンドレイジング協会が公開している「ファンドレイジング行動基準」では、その行動規範の一つに、「社会から支援を得て、実りある活動成果を生み出していくため、組織運営やファンドレイジングに、適正な運営コストが必要であることへの理解を広める。」という項目があります。

実際、寄付集めや会員拡大にはコストがかかります。寄付集めのパンフレットの作成、ウェブサイトでの広報、ダイレクトメールの発送、個別訪問、イベント開催、支援者データベース保持、オンライン決済手数料、そしてそれを担う職員の人件費など、ざっと考えても色々なコストがかかっています。

しかしながら、ファンドレイジングコストについて、ともすれば、その事実を支援者に周知することに抵抗感をいだく、ひいては自分たち自身もコストをかけることへの罪悪感のようなものを抱いてしまってはいないでしょうか。「善意のこめられたお金を、できるだけ直接的な課題解決活動のために費やしたい。」という気持ちを「間違っている!」とは言いません。

また、通常、会計報告において、ある事業の実施のために行なった寄付集めなどのファンドレイジングのコストは「事業費」のなかで、そして組織運営のための会費や寄付集めにかかったコストは「管理費」のなかで、他の経費とともに、「広告宣伝費」、「印刷製本費」、「通信運搬費」「人件費」などと会計処理されたりしています。それも間違いではありません。

ID-100246803ただ、それとは別に、「いくら集めるために、いくら使った」というファンドレイジングコストという視点をしっかり持って、結果を金額的に明らかにすることが必要ではないかと思います。また、予算化に際しても、「いくら集めるために、いくら使う」という目標設定も必要だと思います。そのことが、ファンドレイジングの成果の測定になり、より戦略的なファンドレイジング計画の策定にもつながるはずです。

ファンドレイジングコストの計算式は、「ファンドレイジングコスト=経費/獲得金額」です。

例えば、人件費(按分)、印刷費、発送費用などに10万円かけてある事業への寄付を募って、その結果100万円を得たとしたら、ファンドレイジングコストは 0.1=10%となります。

では、ファンドレイジングコストの「目安」はどのくらいなのでしょう。残念ながら国内での資料がないので、米国の資料をご紹介します。

まず、ファンドレイジングの手法ごとに、どのくらいのコストがかかるのかを分析した、James Greenfield氏の著書「 Fund-Raising: Evaluating and Managing the Fund Development Process」 (1999) から。これは、ファンドレイジング情報サイト「SupportingFundraising 」の中の “  What is the average cost per dollar raised? ” に掲載されています。
http://www.supportingadvancement.com/faq/cost_per_dollar_raised.htm

それによると、1ドルを得るためにかかる費用については・・・

・大口寄付: $ 0.05 t〜 $ 0.10
・企業寄付や助成金 :$ 0.20
・既存の支援者へのダイレクトメールから: $ 0.20
・新規支援依頼のダイレクトメールから: $ 1.00 〜 $ 1.25
・遺贈 $ 0.25
・イベント $ 0.50
そして、平均的なファンドレイジングコストは、1ドル集めるのに 20セント、つまり20%だとしています。

なお、引用元の「Fund-Raising: Evaluating and Managing the Fund Development Process (1999)」は 日本でも購入できます。かなりのボリュームですが、Kindle版もあります。

続いて、米国ファンドレイジング協会(AFP)が会員向けに公開している資料「Measuring Fundraising Return on Investment and theImpact of Prospect Research: Factors to Consider」では、「適正なコスト」が掲げられています。

・ダイレクトメール (新規) :$1.25〜$1.50
・ダイレクトメール (継続): $0.20〜$0.25
・イベント:$0.50
・企業寄付:$0.20
・助成財団 :$0.20
・遺贈 $0.20〜$0.30

こちらでも、新規の対象へのダイレクトメールやイベント開催は先の James Greenfield氏の著書による「平均20%」にくらべるとコスト高に思われますが、これらは潜在的支援者への働きかけで、いったん寄付者になってもらえたら、その後は 「既存の寄付者」となってコストが下がることが見込まれるので、チャレンジする値打ちがあるということです。

なお、このリストの一部も、「SupportingFundraising 」の中の「 What is the average cost per dollar raised?」に掲載されていますが、元の資料はAFPの会員でないと閲覧できないのですが、下記に掲載されています。http://www.afpnet.org/files/secure/index.cfm?FileID=29538

ちなみに、AFPは海外のオンライン会員だと年会費が50ドルでウェブからたくさんの資料が得られますし、もし米国のファンドレイジング大会に参加する際には大幅な値引きも受けられるので、入会もおススメです。

ファンドレイジングの方法はそれぞれの団体にあったものを選んで実行する必要がありますが、いずれにしても一定のコストは必要ですので、まずはコストが発生することを組織内で確認して、どのくらいのコストがかけられるのかの決めなくてはなりません。また、コストに見合った目標を達成できたかどうかで効果を計らなければ、次の計画も立てられません。

また、もし、一年に1億円集めている団体なら、2千万円のファンドレイジングコストはかけてもいいのではないでしょうか。この2千万円には、もちろん、ファンドレイザーの給料も含まれます。ファンドレイジングに関するコンサルタントへの支払いなども払えるでしょう。1千万円だって200万円はきちんと費やしていいのです。

そして、何よりも重要なのが、このファンドレイジングコストについて支援者にきちんと理解してもらえる努力をすることです。「寄付したお金はがすべて受益者の元に届く」のではないということを伝えなければなりません。社会とのコミュニケーションをはかりながら社会の課題とその解決策を伝えて、課題解決の「仲間」としての支援者を拡大するためのコストは、「社会を変える」ことを目指す団体にとって必要不可欠なものだと自覚し、それを伝えなくてはなりません。

ファンドレイジングコストから目をそらさないプロフェッショナルなファンドレイザーが活躍することが、日本の寄付文化の醸成と寄付市場の拡大に必要だと思います。