夢と希望


寄付をたくさん集め、多くのボランティアの協力とともに社会の課題解決に成果を上げている団体と接していると、いわゆる経営資源とされる「ヒト・モノ・カネ」がきちんとそろっていることに関心したりします。でも、実は、それ以前に(それ以上に)、彼らには大きな資源があることに気づき、つくづく敬服させられます。それは…夢と希望。

ところで、夢と希望は同じようで違うと思います。

夢は「見果てぬ夢」というように、時にはあてどのないことのように思えたりします。実現したいと思っても具体的なロードマップにまで落とし込めなかったりします。その一方で「夢を描く」と言うように、その夢が叶った時の状態は、すごく鮮やかに思い浮かべることができます。

「大リーガーになりたい!」という夢を抱いて野球教室に通う小学生は、「そのために、明日からどうするの?」という具体的なTo Do リストを持っているわけではありませんが、自分がメジャーリーグのユニフォームを着ている姿をノートの片隅に描いたりします。

handsでも、希望となると、もう少し具体的に実現に向けた筋道が考えられたりします。先ほどの野球教室でがんばる少年なら、「希望」として野球の強い中学や高校に進学したいと考えていたりします。

そして、夢と希望の共通点は、どちらも生きる上での原動力になるということ。希望を持って、夢を抱いているからこそ、前述の少年は炎天下の野球教室でがんばることもできるわけです。

NPOも、夢と希望が団体が生きていく上での、すなわち運営されていく上での原動力、糧(=資源)だと思います。元気なNPOには、これがあるのです。

言い換えてみると、NPOのミッションは「希望」で、ビジョンは「夢」ではないでしょうか。

NPOならミッションもビジョンも持っていて当たり前じゃないか・・と思われるかもしれませんが、ここで大事なのは団体の定款に書くために明文化したというのではなく、スタッフ一人一人が、団体の「夢と希望」を自分の「夢と希望」として胸に抱いていて、それを自分の言葉で語れて、多くの人たちと「共有」していることだと思います。

ここで一番のポイントは「共有」するということ。普通、「夢を与える」とか「希望を与える」とか言いますが、ここでは「共有」。

例えばアーティストは夢や希望を「与えて」くれます。

私ごとで恐縮ですが、私はケツメイシが大好きで、特に「ライフイズビューティフル」は不安になったり、くじけそうになった時によく聴きます。ケツメイシが楽曲を通じて提供してくれている言葉に生きる力をもらっています。でも、私はケシメイツと自分自身の人生の夢や人生を共有しているわけではありません。

他方、あるNPOの会員になっている私は、その団体のビジョン(夢)とミッション(希望)を共有していると感じています。団体のもつ夢と希望を自分の夢や希望と同じだと感じて、自分の生きる社会、子ども達の未来を良くしたい思いに重ねて、会費を払い、機関誌を読み、イベントに参加します。ですから、頼まれたわけでもないのに、友達をイベントに誘ったり、家族に寄付を勧めたりしています。こういう私の行動が、その団体の「ヒト・モノ・カネ」といった資源の一部を生み出しているわけです。

もう一つの大事なポイントは、「ヒト・モノ・カネ」という資源が「生まれる」ということです。企業のセミナー等ではヒト・モノ・カネという経営資源をいかに「獲得するか」というように、「生まれる」ではなく「獲得」というように表現します。

前に、大きな夢を実現した団体の代表から、「自分たちは他力本願だ」という言葉を聞いて驚いたことがあります。熱意と努力で事業を成し遂げた人の言葉なので意外でしたが、「活動を考えるときに、最初から、多くの人の力をどう集めたら問題解決が実現するのか・・という視点からスタートする」という言葉を聞いて納得しました。

NPOは自分達だけの力で何かを成し遂げるのではなく、多くの人たちと力をあわせて社会の課題解決に取組むものだということです。そして、その力を合わせるための前提になるのが、ビジョン(夢)とミッション(希望)の共有です。

「ニワトリが先かタマゴが先か?」という話のように思われるかもしれませんが、私は、NPOは「始めに夢と希望ありき」で仲間ができて(ヒト)、活動に共感する人たちのなかから善意の資金が生まれ(カネ)、活動に必要な(モノ)が整っていくるように思えます。

活動が停滞することも、頓挫することもあるでしょうが、なかなか思い通りにならないことも含めて、夢や希望を伝えることで、「仲間」の輪が拡がり、その仲間が「ヒト・モノ・カネ」を生み出してくれるのです。それは、団体が手練手管で獲得するというものではなく、同じ夢や希望をもった仲間なら、自ずと起こす(起こしたくなる)行動が「もたらすもの」だと思います。

「ヒト・モノ・カネ」をきちんと得ているNPOからは見習うべきノウハウがたくさんあります。例えば、そういうNPOのホームページからは団体の抱く夢と希望がヒシヒシと伝わって、「仲間になりたい!」と思い、「何か自分にも出来ることはないか?」と考えたりします。共感を得るウェブサイトの作り方のノウハウがあるということは確かです。でも、私たちが「ヒシヒシと感じた」のは、団体が「ホームページの上手な作り方」を知っていたからではなく、より良い社会の実現への夢と希望、それに共感する人たちと連携したいという熱意がもたらしたのだと思います。

どの団体も「夢と希望」をもって立ち上がったに違いありません。ただ、活動展開の中で、自分たちのやり方、自分たちの考えだけで活動を推進したいと考えてしまうことがあります。広く社会とのコミュニケーションをとったり、新しい仲間の意見を聞いたりしていると、「思ったことが素早く出来なくなる」と感じたりもします。

でも、そもそも、どんなに自分たちだけでがんばっても、一つの団体の出来ることは限られています。そこで、先ほどの「他力本願」の精神で、自分たちと同じ夢と希望を抱いている人たちを増やすことに注力したいものです。そのなかから、きっと、新しい「ヒト・カネ・モノ」が団体に、その団体の活動にもたらされるでしょう。

私はファンドレイジングのノウハウを伝えることを仕事にしていますし、この「3分間ファンドレイジング講座」もファンドレイジングのノウハウを書いているブログです。でも、「みんなと一緒に私たちの夢や希望を叶えていこう!」という熱い思いがあってこそ、ここで解説しているノウハウも活かしていただけるのだと考えています。

ファンドレイジングは、大きな夢と希望を抱いて、それを人々と共有することからはじまるのだと思います。

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thank you今回、「3分間ファンドレイジング講座」が50回目になります。昨年の2月に連載を開始してほぼ1年、多くの方々の助言や応援に支えられて50回目を迎えられたことに心から感謝しています。「3分間ファンドレジング講座」で書いたことの多くは、私が尊敬する素晴らしいファンドレイザーの方々から学んだことです。

本当にありがとうございます。

50回目ということで、常々考えていることを書かせていただきました。これからも、よろしくお願いいたします。