人脈を広げるには

デジタル大辞泉によれば、人脈とは「山脈・鉱脈などになぞらえた語。ある集団・組織の中などで、主義・主張や利害などによる、人と人とのつながり。」だそうで、「豊富な人脈を誇る。」なんていう例文が出てます。

ファンドレイザーにとっても、支援者拡大に向けた「人脈」は大切なものです。そこで、ファンドレイザーが人脈を開拓していくために必要な6つのポイントを解説します。

1.まず、ファンドレイザーにとっての「人脈」とはどいうものでしょう。主なものとしては下記の2つがあります。

1)資金をもたらしてくれる人
ここでは、活動に共感して寄付をしてくれるという人(個人)というより、「鉱脈」になぞらえて、自ら寄付してくれることに加えて、他にも資金提供してくれる人を連れて来てくれる人、具体的には、潜在的支援者とみなせる企業や個人の集まり、あるいは協働先としての企業や行政、助成機関などを紹介してくれるような人。いわば、その人を「入口」として支援者拡大が見込まれるような人です。

2)ファンドレイジングに必要な専門家
知識や技術を提供してくれる、あるいは情報発信に協力してくれる人たちを意味します。例えば、遺贈を積極的に受け入れていくとしたら、受け入れに際して、あるいは問い合わせに対して、法律や税についての専門家との人脈が欠かせません。また、マスコミ関係者との人脈をきちんと築けていたら、団体についてのマスコミ報道も増え、団体の認知度向上につながります。

2.では、ファンドレイザーが人脈を開拓して広げていくには、どのようなことに留意したらいいのでしょう。6つのポイントで考えます。

1)「見た目」が大事
「人は見た目が9割」というベストセラーがありますし、最近は「人は見た目が100%」というドラマがあり、こういうタイトルを見ると、「人は見かけじゃない、中身よ!」と反論したくなりますが、初対面の人が「あなた」のことを知るには、まずは、表情、態度、声、衣服といった、言葉以外の「あなたらしさ」を表すものから、多くの判断材料を得ていることは確かです。

「取っつきにくい」、「なんか感じ悪いね」、「風変りだね」という印象を与えてしまっては、話す機会も名刺交換の機会も失いますし、初めにマイナスな印象を持たれてしまっては、それをプラスにしていくのに手間がかかってしまいます。

TPOに合わせた服装、にこやかな表情、穏やかな語り口、礼儀正しさといった「見た目」には常に気を配らねばなりません。

「異彩を放つ」ことで他人をひきつけるには、よほどの「オーラ(風格、圧倒する存在感)」、あるいは著名人であることなどが求められ、一般的ではありません。

2)「Give and Take」 より「Take and Return」
人脈をつくろうとすると、ともすると「Give and Take」をちらつかしたくなりますが、ファンドレイジングでたくさんの「Take」が欲しいときに、こちら側にそれ相応の「Give」ができるのでしょうか。

無理に肩ひじを張るようにして「Give and Take」で迫るより、「Take and Return」の精神で接することが良いと思っています。「ご支援くださったら(Take)、きっとお返し(Return)させていただきます。」という姿勢こそが、NPOのファンドレイザーには似合っているのではないでしょうか?

この「お返し」は場合によっては「くださった」方に直接届けるものではないかもしれません。ともに社会を良くすることで共有できるものというイメージです。こういう認識で接することがファンレイザーらしい人脈開拓だと思います。

3)肩書じゃなくて「人」とつながる
人脈に肩書はつきものです。「こういう組織の、こういう立場の人とつながる」ということが重要なポイントであることは確かです。たくさんの人と名刺交換した後に、団体にとって役に立ちそうな肩書の人を選んで、個別にメールを送って、親交を重ねてファンドレイジングに協力してもらったという経験は誰にでもあることでしょう。それは職業人として当然のことです。

ただ、肩書だけを重視していると、その人がその肩書から離れた時に、「それなら、さよなら」となります。先方も「後は、つぎの人に・・」と紹介してくれたりして、それはそれでありがたいのですが、せっかく築いた人脈を失うのはもったいないと思います。

ファンドレイジングの観点から言えば、一度つながった人とは、肩書が変わっても、つながり続けることが大切です。業務上の関係がなくなっても、個人として支援者であり続けてもらいたいものです。寄付に限らず、むしろ、個人だからできるフットワークの軽い支援、プロボノであったり、人の紹介であったり、そういうことも期待できます。

「肩書」から始まりがちなつながりを、どう個人としてのつながりにしていくか、まさにファンドレイザー自身に対する共感の醸成を心がけたいものです。

4)学びの場と遊び場が人脈の宝庫
仕事の場は、特定の目的を持った「似たような人たち」が集まる場になりがちです。「異業種交流会」と銘打っていても、主催者やテーマで参加者が限定される、あるいは、特定の強い目的意識を抱いて(例えば地域再生の仲間づくり等)集まる場合、お互いがターゲットを絞って交流することになり、新しい出会いを逃す、下手をすると「相手にされない」ということも起こり得ます。

そこで、学びの場と遊び場。この場合の「学びの場」は、「NPOスタッフ向け研修」というような同業者の集まりを意味していません。より一般的な、例えば文化的な講演会や講習会、イベントなど。そういう場には様々な人が参加しています。同じテーマや講師に関心を持っているということから、席の近い人と知り合う、グループワークで知り合うことは難しくありません。

また、「遊び場」も人脈の宝庫です。「遊び場」という表現が相応しいかはわかりませんが、友達の結婚式の二次会で地元企業のオーナーと知り合って仲良くなって、団体の協賛企業になったという話を聞いたことがあります。子どもを連れて行ったプレイパークで知り合った人たちが団体のボランティアになってくれた、同窓会で再会した人がマスコミ関係者だった・・・など、仕事を離れたプライベートな楽しい時間にも人脈を広げる可能性はたくさんあります。

仕事が忙しいと、仕事に関係のないことを学ぶ、あるいは遊びに出かける機会が減ってしまいがちですが、人脈を広げるためにも「仕事以外の場」に積極的に出向きたいものです。

5)いつでもどこでも誰にでも団体のことを話す
先の4つのことを心得ていても、「知り合いになる」ためには、引っ込み思案ではだめです。

まずは声をかけて自己紹介して知り合うことから始め、さらにファンドレイザーとして今後の何らかの支援につなげるためには、団体のことを上手に話さないとなりません。

いつでも、どこでも、誰にでも団体のことを話せるような「決め台詞」を何パターンか用意しておくといいでしょう。

ただ、団体の話を長々と話しても迷惑がられるだけです。むしろ、相手の話を先に聞いてください。相手がどんな人かを知れば、その相手に合った話ができるでしょうし、何よりも、「自分の話を聞いてくれたから、次は聞く番だ」となるでしょう。相手の名刺を受け取ったら、何か質問してみてもいいかもしれません。「このロゴ、ステキですね。どいう意味があるのですか?」とか、「どういうお仕事ですか?」とか。

そして、名刺交換しながら簡単に団体の目指していることと、一般の人がわかりやすい活動の一つでも話したら十分です。テレビのCMのように15秒以内で終えたいものです。「へえ、面白いことしているんだ」って思ってもらえたら大成功。興味を持ってもらうことが大事です。また、誰か一人と長々と話し込むことは、他の人と知り合う機会を失うことにもなります。

団体について興味を示してもらったら、小さなパンフレットとかを渡してもいいでしょう。ただし、このときに渡すものが「A4サイズのチラシ」ではだめです。もらったものを目の前で折ることは失礼だと思う人もいますし、要するに相手には迷惑で、「空気の読めない人感」が出てしまいます。そのままポケットやバッグに入れられるようなハガキサイズ位のものが相応しいでしょう。

おすすめなのは名刺の裏に簡単な団体紹介を記載しておくことです。時々、裏面を英語名刺にしている人がいますが、英語名刺が必要な場面より、団体を説明したいことの方が多いはずです。「名刺の裏に書いてありますが・・」という感じでさらっと団体について話せます。名刺に写真を入れるのも「思い出してもらう」ためになるでしょう。

6)出会いを大切に
そして、出会いをつながりにするためには、「昨日はありがとうございました!」というようなメールが欠かせません。

早速、もらった名刺のメールアドレスに団体のメルマガを送りつける、職場に印刷物を送り付けるというのでは、「NPOの人は押しつけがましくて、知り合うと面倒くさい」という印象になりかねません。

まずは個人として知り合って好感を持ってもらい、その後、団体についても関心を抱いてもらい、最終的には何らかの支援者になってもらう、そういう段階を経ていくことが人脈をつくる際には必要です。

「人は人に寄付する」という言葉があります。ファンドレザーとして、豊富な人脈を開拓して支援者拡大を目指したいものです。