共感されるストーリーのつくりかた


ファンドレイジングには、広く多くの人たちに活動を伝えて共感を得ることが欠かせません。

団体が取り組む社会課題についての共感、課題によって困難な状況にある人たちへの共感、課題解決の手法への共感、活動する人たちへの共感、活動を支援する人たちへの共感・・・共感の生まれる場面は多々あります。

そこで重要なのが「ストーリーテリング」。これは、印象に残るエピソードを語ることによって、聞き手の気持ちを引き寄せるコミュニケーション手法のひとつです。では、どのような「ストーリー」が、団体への共感につながるのか、考えてみます。

かつて、私自身、誰かに、あるいはたくさんの人たちを前に自分の団体について話す時には、団体のホームページ上の「団体概要」のようなことを話せば良いと思っていました。団体の設立経緯や目的、活動内容などを暗記して話していました。でも、海外のNPOの方たちが自分たちの活動についてスピーチするのを聞いて、会場一体となって聞き惚れるようなシーンを体験して、私が話してきたのは「説明」だけで、彼らの話には「物語=ストーリー」が含まれていることに気づきました。

具体的には、よくスピーチやプレゼンテーションのはじめに、”Let me tell you about xxx” (xxxさんについてお話しさせてください。) というフレーズを聞きました。そして、彼、彼女、または彼らについての「エピソード」が語りはじめられるのです。そのxxxさんは、過去の自分だったりもします。そして、この文字通りの「ストーリーテリング」に会場がシーンと聞き入ったところで、一拍おいて、いわゆる団体説明が簡単にあって、最後には「皆さんもご一緒に・・社会を変えていきましょう!」的に支援を訴えて終了。そして拍手喝采!です。時間にしたら3分ほどですが、そこにいる人たちの心をぎゅっとつかむ感じです。

日本でも、「あの人、話が上手だなあ」と感じさせるNPOの人の話を聞くうちに、どうも共通するパターンがあるように思えてきました。そこで、簡単にその構成を6つのパートにまとめてみました。はじめに種明かしをすると、パート1から4がストーリーの部分。いわゆる「起承転結」になっています。

パート1.ストーリーの主人公の紹介
説明)「こんにちは・・・」というような簡単な挨拶、感謝とか、短いジョークのあとに、「xxxさんの話をさせてください・・・。」とすぐストーリーに入ります。ここでは、名前、年齢、印象的な容姿、たとえば「いつもホッペが赤い」とか、「やせて力のない目をした」などというように細かく語ります。「そもそも名前なんか言っていいの?」と気になりますが、ファーストネームだけだったり、あるいは「仮に、xxxちゃんって呼ばせて下さい」みたいな言い方もできます。仮名なら言わないのと同じなのにと思えますが、固有名詞にはリアリティを感じさせるチカラがあるので、名前を付けて語ることは重要なポイントです。

パート2.主人公がどういう状況にあったか。
説明)どんな困難に直面していたかを語ります。けっこう悲劇的なことも静かに淡々と語られます。また、ここにはイメージをかきたてて記憶に残るようなキイワードを入れることも大切です。そして、そのキイワードは、何回か繰り返されることでさらに記銘されていきます。

パート3.その主人公と団体との出会い。
説明)どうやって主人公が団体と巡りあったのか、そのときの状況、出会った時に何が起こったのかなどについて、ドラマチックに。なお、ここまでの話の間、何度も主人公の名前が出てきます。固有名詞があると話に真実味と人間味が加わるからです。さらに、「同じ話が続いている」ことを理解してもらうことにもつながります。

パート4.そして主人公の状況がどう変わったか。
説明)ここがクライマックスですね。けっこう感動的に語ります。そして、一番大事なのが、パート4で終わるストーリーの最後に、ひと呼吸おくこと。「なるほど!」と聴衆が感動する、ある種の「お決まり的な瞬間」が必要だからです。

パート5.団体の紹介
説明)4までのストーリーをうけて、ここからが説明部分になります。「私たちは・・・を目指して・・・といった活動しています・・・」というようなことを、決して専門用語は使わずに、定款に書かれたような固い文章ではなく、平易な言葉で紹介します。

パート6.支援を募る
説明)寄付などの支援を募る大事な部分ですが、目的、目標金額、寄付の方法などを言いつつも、あくまでも、会場との一体感を保ちながら、「一緒に社会を変えていきましょう!」「・・・を実現しましょう!」というメッセージで終了します。この部分で、必ず団体名を言うこと。素晴らしいメッセージに共感した人なら、会場で名刺交換などで声をかけてくれる、会場内に置いてあるパンフレットを手に取るなどの行動を起こしてくれます。さらに、ネットで詳しく調べたり、そこからメルマガ登録してくれたり、そして寄付やボランティアで参加してくれる、という展開が期待されます。

これら1から6までを3分間以内で話すには、文字数は1000文字以内です。普通、人が1分間に話すのが300文字だと言われています。けっこう短いです。でも、大事なのはたくさん理解してもらうことではなく、感動して団体名を(話し手のことを)心に残してもらうことです。それが次のアクションにつながるからです。

また、この1から4のエピソードは、何パターンかつくっておく必要もあります。話をする対象に応じて、どのエピソードが「心に響く」かを考えて選択するためです。受益者、活動者、支援者、そして自分・・・ストーリーの主人公はたくさんいるはずです。

さらに、原稿を書いたら、それを覚えて話す練習も欠かせません。スポーツでは「練習でできないことが試合でできるわけがない」と言います。練習を重ねて自信をもつことが、落ち着いてきちんと伝える態度や口調につながると思います。

最後に、かつて共感を得るための「ストーリーテリング」について書かれた本で引用されていた言葉を思い出したので、ここに紹介します。

黒人女性としてマイノリティーの視点から多くの有名な詩や自伝的小説を著したアメリカの作家のマヤ・アンジェロウさんの言葉です。

みんな、あなたが言ったことを忘れてしまうでしょう。
みんな、あなたがしたことを忘れてしまうでしょう。
でも、あなたに対して抱いた感情を忘れることはないでしょう

People will forget what you said,
people will forget what you did,
but people will never forget how you made them feel.