米国「2016 International Fundraising Conference」(3月20~22日)参加レポート~その1~(全4回)


3月20日~22日までの3日間、アメリカのマサチューセッツ州ボストンで開催された、米国ファンドレイジング協会(AFP=Association of Fundraising Professionals)主催の「2016 International Fundraising Conference」に参加してきました。

今回、私が受講した9つの分科会と2つの講演などからの学びを全4回で皆様と共有したいと思います。

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■その1(本記事)
■その2(こちらに掲載)
■その3(こちらに掲載)
■その4(こちらに掲載)

 

毎年、AFPの大会には世界各国から約4000人のファンドレイザーが集います。今回は日本から14人が参加しました。私は3年ぶり、3回目の参加です。

3日間の会期中は、ファンドレイジングについて長短合わせて60を超える分科会(エデュケーション・セッション)から自由に選択して学ぶことが出来ます。また、参加者全員が集まれる大ホールで著名人による講演(ジェネラル・セッション)も開催されました。

board membersさらに、150を超える企業や団体が展示ブースを出展し、様々なサービス(支援者データベース、オンライン決済、ウェブ作成、ダイレクトメールなど)や商品(ノベルティグッズ、寄付者へのギフトなど)を紹介していました。

今回、私は、3日間で9つの分科会と2つの講演を受講しました。私なりにそれらから学んだことと気づきを全4回でまとめてみます。

なお、ほぼ全ての分科会の配布資料は、下記のAFPのサイトで一般公開されていますので、それらもぜひご参照ください。(なお、なにぶん英語のセッションですので、レポートに誤った解釈があったらご容赦ください。)
http://conference.afpnet.org/2016/ConferenceHandouts.cfm

IMG_4829■分科会■
1)The Art and Science of Fundraising Persuasion
ファンドレイジングを成功させるには相手を説得することが必要となりますが、その際に有能なファンドレイザー達が経験的に理解して実践していることについて、それを裏付ける社会科学的な理論と実例を示しながら、次の6つのキイワードで解説。

  • 好意
    とりわけ「相思相愛」だと感じると「イエス」と言いたくなる。好意を持ってもらうためには、まずこちらの「好意」を示すこと。
  • 社会的証明
    他に賛同者が多いことを自分もしたくなる。たくさんの人に支援されていることを示すことが大事。
  • 報恩
    良いことをされると、それに報いたくなる。丁寧なお礼状などが渡されると、また寄付したいという気持ちになる。
  • コミットメントと一貫性
    一度”肩入れ”したことに一貫して関わりたくなる。スローガンのステッカーを身近に貼ってもらうとか、“自分が肩入れしている=支援している”ことを実感してもらうことが大切。
  • 権威
    権威のあるものを信頼する。有名人でなくても、権威を感じさせる人やモノを示すと信頼度が高まる。
  • 希少性
    希少なものに価値を見出す。「あと・・円で達成します!」というようなメッセージに反応してもらえる。

これまで、支援を募る際に「そういう点に留意した方がいいのだろう」と思っていることに確信が得られたセッションでした。事例は広告など寄付集めの事例以外からのものが多くわかりやすかったです。たくさんの事例を盛り込んだプレゼン資料をぜひご覧下さい。 配布資料はこちら art and science

2)Teach Your Board Members to Open Doors to New Major Gifts Prospects Without Being Pushy
理事の多くはファンドレイジングに消極的になりがち。セールストークで知り合いからお金を集めるのがファンドレイジングだ・・というような認識ではファンドレイジングに関わりたくないと考えてしまいます。そういう理事に協力してもらうためには、ただお願いしますというだけではなく、ファンドレイジングの手法とその必要性を伝えることが必要。まず手始めに、理事が潜在支援者に対して押し付けがましくなく、上手に「伝える」ことができるようになるためには、以下の4点を理解してもらうこと。

  • 何を話せばいいか
    自分たちの取組んでいること、それが世界をどう変えていくのか。
  • どう話せばいいか
    ポジティブな気持ちはポジティブに伝わるもの。逆に「これからお金の話をしなくちゃ・・お金の話はいやだな」というようなネガティブな気持ちがあると相手にもそういう気持ちが伝わってうまくいかない。
  • 会話の進め方
    一方的に話すのではなく相手の意見を求める事が大事。支援を考えている人ほど、そういうことを話したがっている。
  • その後につなげるためすること
    最初の面会で共感を得た後に、お茶に誘う、見学会やイベントに誘うなど、次に何をしたらいいか。

理事に協力してもらうには、それなりの準備とトレーニングの場をもうける必要があるのだということです。講師のゲイル氏は、多くの団体のファンドレイジングのコンサルタントをされていますが、特に理事会マネジメントについての専門家だそうです。事務局にすれば、「理事を教育するなど畏れ多くて無理・・・」と思ってしまいますので、彼女のような「外部」の人に関わってもらうことも必要なのでしょう。
配布資料はこちら Board Members

3)Top 7 Expert Practices for Writing Winning Grants
いわゆる「助成金の申請書の書き方」のセッションですが、単なるテクニックではなく、そのプロセスで団体が成長していく点も重んじた内容でした。具体的には、下記の7つのポイントが解説されました。

  • 書く前に勝つ!
    団体の活動に対する評価や認知、日頃からの関係性が採択に際して有利に働くことがあるので、そういう点も日頃から向上させておくこと。
  • テクニックを磨く
    まずは、募集要項にきちんと従って、書き方、添付書類、提出期限などをきちんと守ること。経験を積む中で、たとえ決められた「書式」がなくても、「何を書くべきか」がわかるくらいの熟練度をもちたい。
  • 審査における人間的な要素に留意
    誰がどういうプロセスで選考するのかを考えて、また、プログラムオフィサーの気持ちになって、好感度と他の申請との差別化を図っていく。
  • 読み手を引き込んでいく文章
    まず冒頭の文章が重要。また、理解を促すためには、統計的資料と情に訴えるストーリーの両方を盛り込むこと。読みやすさのためには、適切な改行、レイアウト、くり返し出てくる長い固有名詞を頭文字で表すといった工夫をすること。
  • 速く読めるように
    ダラダラ書くのではなく、要点をきちんとまとめて書くことで、読み手の負担を軽減することも大切。審査に慣れた審査員ほど“読み飛ばし”するので、その点にも留意して書くといい。
  • 団体内の巻き込み
    申請の際からプロジェクトのリーダーを決めて、役割と責任も明確にしておかないと、“決まってから慌てる”ことになってしまう。
  • マネジメントに関して
    団体外の申請書作成のために契約した「助成金ライター」が書く場合はスタッフが書く時以上のコントロールが必要。

配布資料はこちら grant writing

■講演■
コフィ・アナン:元国連事務総長

ananジェネラル・セッションは、著名人による講演で、大きなホールに全参加者が集います。その内容は、総じて、いま世界で起こっている問題、それに対する挑戦、それを支えるフィランソロピー精神の重要性、そして、ファンドレイザーが「社会の課題とその解決に不可欠な人々のフィランソロピー精神をつなぐ」大切な役目を担っているということを再認識させるものです。

初日は、ガーナ出身で第7代国連事務総長を務めたコフィアナン(Kofi Atta Annan)氏が講演されました。

アナン氏は、自身が事務総長在任中に尽力してきた、人権保護、南北格差是正、地域紛争、エイズ問題などについて語り、事務総長退任後に設立したコフィ・アナン財団についても話されました。

講演では「パートナーシップ」の重要性に何度も触れられました。彼自身が国連時代に非営利セクターや営利セクターとの連携によって国際問題の解決に取り組むことに注力したが、国連という場ではなかなか容易ではなかったそうです。

パートナーシップの重要性を語る中で、アナン氏はアフリカのことわざ、「もしあなたが、急いで行きたいなら、一人で行きなさい。でも、もしあなたが、遠くへ行きたいなら、一緒に行きなさい。(If you want to go quickly, go alone. If you want to go far, go together.)を引用されました。(続く)
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