米国「2016 International Fundraising Conference」(3月20~22日)参加レポート~その2~(全4回)


3月20日~22日までの3日間、アメリカのマサチューセッツ州ボストンで開催された、米国ファンドレイジング協会(AFP=Association of Fundraising Professionals)主催の「2016 International Fundraising Conference」に参加してきました。

今回、私が受講した9つの分科会と2つの講演からの学びを全4回で皆様と共有したいと思います。今回はその第2回目です。

無題■その1(こちらに掲載済み)
■その2(本記事)
■その3(こちらに掲載済み)
■その4(こちらに掲載済み)

■分科会■
4)Behavioral Economics: The Science of Fundraising Psychology
行動経済学では、古典経済学が想定するつねに合理的な判断をする「経済人:ホモエコノミクス」を対象としたものではなく、現実世界に生きる人間を意識・行動を対象とした学問です。そのためマーケティングの分野で注目されてきましたが、昨今はファンドレイジングでも応用されてきています。

講師のバーナード・ロス氏は「ファンドレイジング・日本2014」で基調講演をされた方です。

ロス氏は、ファンドレイジングの効果改善に向け、行動経済学の視点で4つのポイントを話されました。

  • アンカリング(Anchoring)
    認知バイアスの一種で、先に示された数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められる(つられる)ということ。セッションでは、例えば、「ガンジーは何歳で亡くなったか?」という質問をするときに「144歳より上?」と聞いたほうが「70歳より上?」と聞くより大きい数値の回答が得られるということ。寄付についても初めに一定の大きな金額で依頼しておくと、実際の寄付の金額が上がる。
  • フレーミング(Framing)
    情報の内容・意味が同じであったとしても、それを受けとる人によって反応は変わってくる。その団体をよく知っていて信頼できると感じていれば、(500人しか助けられないではなく、500人も助けた、というように)メッセージは好意的(ポジティブ)に受け止められる。
  • ナッジ(Nudge)
    「Nudge」とは選択肢を狭めながら誘導すること。意訳すると「そっと背中を押す」ということ。「皆さんが、このくらいの金額を寄付されています・・」とされると、寄付せざるを得ないような気持になる。
  • パーソナライゼーション(Personalization)
    「多くの人のためになります」というより、「xxさんのために」というほうが人の心を動かす。「難民のために」と言うよりも「アハメド君のために」と言うと訴求力が高まる。

実は、このセッションにはダウンロードできる資料が提供されておらず、受講者には簡単なリーフレットが渡されただけでした。ただ、ロス氏が書かれた「Behavioral Economics」という13ページからなる論文がネットに公開されているのを見つけました。内容はAFPのセッションより専門的な印象を受けますが、ご参照ください。 「Behavioral Economics」はこちら behavioural economics

5)You Can Raise Major Gifts at Your Small Shop
IMG_4827
このセッションでは、まず、最近米国内の年間予算が1000万ドル(約10億円)以下の662団体を対象とした大口寄付に関する調査の結果が報告されました。回答団体の半数が100万ドル(約1億円)規模ということですから、セッション名通り、「小さな団体」にも参考になる結果です。

そして、この調査では、寄付集めに関する「体制」、「方針」などを聞いて、それと大口寄付獲得との関連を分析して、下記のような大口寄付の成功のポイントをあげました。

  • 潜在的大口寄付者を見極めること。
  • 潜在的大口寄付者に一度大口の寄付をしてもらったら、関係性を深めていって継続的に大口の寄付をしてもらうこと。
  • 理事やボランティアに協力してもらうこと。
  • 大口寄付について常に会議のアジェンダに入れること。
  • ITの活用。
  • スタッフの教育。(まずは職場での体験からでいいから、徐々に外部研修などにステップアップして育成)

セッションの締めくくりは「小さな団体でも大口寄付が得られるか?」、そして、「イエス!」でした。配布資料はこちら Major Gifts

6)OPERATION RUBBER TREE: A Case Study on Tripling Fundraising Results in 36 Months
IMG_4811
このセッションは、3年で3倍の寄付金を獲得したChildren’s Centerの事例が、驚異の成長をするゴムの木(高さ30メートルにも育つ)に例えながら紹介されました。

デトロイトにあるChildren’s Centerは、1929年に設立され、虐待、ネグレクト、心的外傷に苦しむ子どもたちとその家族に対するセラピー、養子縁組、自立などを支援する団体で、年間7500人の子どもたちを支援しているそうです。スタッフは300人、年間予算が2700万ドル(27億円)規模の団体だそうです。

実は、この団体はミシガン州の補助金を主な財源としていて、2011年には100万ドルの寄付(収入の3%程度)しか得ていませんでした。州の予算が減らされる中で、「一念発起」して、3年後の2014年には寄付額を3倍の300万ドルにしたそうです。

まずは、土壌を改良するように、寄付部門のスタッフの強化、大口寄付者へのインタビュー、効率の良いファンドレイジング手法の選択、理事の巻き込みなどに取り組んだそうです。そして、試行錯誤の中でKPIを設けて検証しながら、「3倍」に。そうした成長を支える要因が語られました。

  • 驚異的な成長は誰にでもできるものではない。実際、この団体では3年の間には辞任も含めたチームメンバーの入れ替えや増員も多々あり、その入れ替えがチームを強化した。
  • 費用対効果の低いファンドレイジングはやめるとして、チャリティイベントのコストなどもしっかり管理すること。
  • ミッション遂行とそこから生まれるストーリーによる訴求。
  • 集中し続けること
  • 急な寄付金拡大には、資源の不足、スタッフの反発、理事の信任を得ることの難しさ、変化への抵抗、(先行)投資のリスクなど、難しい課題がともなう。
  • 泥まみれになることもある。(楽な仕事ではない)
  • とにかく、成功の秘訣は、希望と情熱と展望を持ちつづけること。

登壇した講師自身が、この取り組みをリードした人でしたので、とても迫力のあるプレゼンテーションでした。配布資料はこちら 36 months
(続く)
■その1(こちらに掲載済み)
■その2(本記事)
■その3(こちらに掲載済み)
■その4(こちらに掲載済み)