コンサート、バザー、食事会、オークション・ディナーといったイベントによるファンドレイジングは、成功すればまとまった金額を得られますし、支援者拡大の場ともなり得ます。他方で、イベント開催には大きな時間と労力が必要とされます。「くたびれもうけ・・」にならないためには・・・5つのポイントをあげてみます。
1.明確な開催目的
ファンドレイジングのためのイベントには、その主たる目的を考えた時に、下記の3つのタイプがあります。多くの場合は「混合型」ですが、第一目的を何にするかで「仕立て」が変わってきます。
① 資金調達
② 社会的課題についての周知(新規支援者の獲得)
③ 支援者との関係性の強化
高額な参加費を払って豪華な会場でディナーやオークションやビンゴゲームを楽しむようなチャリティイベントが日本でもけっこう開かれています。まさに資金調達を第一目的にしたイベントです。そこでは、ある種の非日常的な雰囲気の中で、参加者が高揚した気分で参加費以上のお金を使うための演出がなされます。もし、こういう会場で「社会的課題への周知」ということで、団体が取り組んでいる活動の現場、たとえば戦禍の悲惨な状況や被災地の惨状などについての資料が手もとに渡されたり上映されたりしたら・・・これは逆効果になると思います。活動がもたらした「明るい話題・成果」などが主催者からの挨拶の時に報告されて「拍手喝采!」みたいなのが相応しく思われます。
他方で、課題の周知を目的としていたら、通常より安価な入場料のコンサートを開催してでも、多くの人に来場してもらい、そこで、しっかりと活動について説明して、たとえば、アーチスト自らも舞台から支援を請い、皆が社会の課題解決について心を一つにするような演出、そして会場内のいたるところで寄付を受け付けるといった段取りが必要です。楽しいことばかりで「何のためのイベントだったかわからなかった・・」というのでは目的が果たせません。
支援者との関係性の強化なら、これまでの支援度に応じた「対応(席次や紹介やプログラムへの名前掲載など)」が不可欠ですし、支援者への感謝を表すことと、支援者の気持ちや考えを直接聞くような場面、そして、受益者や団体スタッフと支援者の交流、支援者間の交流の機会もイベント内に用意したいものです。
ひとくちに「ファンドレイジングイベント」と言っても、そこから得られるものはいろいろあります。開催の目的を明確にしておけば、適切な開催時期、会場、内容、参加対象、参加者数、広報の方法などが決められ、成果についても具体的な目標が掲げられてきちんと検証することができます。
2.緻密な計画策定と実行
予算計画も含めて、イベント開催に向けては緻密な計画を立てる必要があります。イベントの規模によって「準備期間」は変わりますが、大きな予算と労力を要するイベント開催は年次計画に盛り込まれてないとならないことから、「こういう目的と内容のイベントをやる」と決める段階から始めると1年間の準備期間があってしかるべきかと思います。
計画には、会場予約、広報(プレスリリースも)、協賛・後援依頼、登壇者依頼(出演者、司会者など)、参加申し込み手順、ボランティア募集、終了後の参加者へのフォローなどを日程に落とし込んで団体内で共有する必要があります。そして、その計画を遅滞なく実行していかなくてはなりません。
思いがけない出費も生じたりしますが、予算内できちんと済ませられるように予算管理も重要です。
イベントについては、予算と進捗の管理をする責任者を明確にして、各作業においては担当を明確にしておくことも大切です。
3.協賛依頼
どのような目的のイベントであっても、ファンドレイジングのためのイベントには「協賛」、いわゆるスポンサーからの寄付が期待されます。寄付はお金だけではなく、時には会場提供や物品提供など、イベントコストの低減やクォリティの向上に大いに貢献してもらえたりします。
そこで重要なのが「協賛依頼資料」です。これは、協賛依頼をした場合に、企業の担当者が上司を説得する際の説明資料になるもので、協賛依頼の際の必需品です。
この資料には以下の項目を記載します。
① 団体について
② イベントの概要
(目的・日時・会場・参加者数・参加費・プログラムなど)
③ 参加者層について
④ 過去に開催していたら、その実績
(参加者数や会場写真など。過去の協賛社や後援名義の一覧も大事な情報)
⑤ 協賛することのメリット
⑥ 協賛メニュー(協賛金額に応じてどういう特典があるのかを明記)
⑦ 今後のスケジュール
これらに、団体紹介パンフレットなどあわせて、持参して協賛依頼をします。
4.ボランティア
ある意味「ハレ」の場となるイベントは、ボランティアにとっても楽しい活躍の場となります。また、イベントにはたくさんの労力や能力が求められますが、それをサポートしてくれる頼もしい存在がボランティアです。イベントボランティアをきっかけに、団体の日常業務のボランティアになってくれるということもあります。
ここで重要なのが、イベント会場ではボランティアも大事な「団体の顔」となるということです。チョットした言葉遣いや態度が参加者の満足度を下げてしまうかもしれません。そこで、ボランティアには事前の説明会が欠かせません。事前に顔合わせすることが、当日の円滑なチームプレイにもつながります。
また、イベントも回を重ねたら、経験のあるボランティアをリーダーにしたボランティアチームを構成して、ある程度自主的に運営を任せることも可能になります。事務局だけでなく、イベント実行委員会のようなものがボランティアを含めた構成で定着したら、それ自体がイベントの大きな価値になるように思います。
5.参加者へのフォローアップ
イベント終了後に、いかに参加者、協力者(協賛企業、後援団体、取材者、ボランティアなど)との関係性を継続・強化していくか、支援者としてのレベルをあげてもらうか、そのためのフォローが重要です。お礼のメールやレターやお礼の訪問時には、単に「参加者数xxx人で無事に終了しました」だけでなく、当日の写真や参加者の声といったイベントの雰囲気を伝える「報告」を盛り込んで「参加してよかった、協力してよかった」と実感していただきたいものです。
また、イベントを機に団体とはじめて接点を持った人たちに対して、SNSでつながる、メルマガ登録してもらうなど継続的な関係のための一歩を用意しないとなりません。イベントをきっかけにして「次のステップ」にむけた働きかけをしなければ、せっかくのイベントも一過性のものになってしまいます。
そこで重要なのが、参加者や協力者をきちんとデータベースに入力すること。イベントに限らず、団体と接点をもった人たちのことはきちんとデータとして残しておくことが重要です。
イベントは団体に関心を寄せる人たちと直接まみえる場となるので、スタッフに大きな充実感を与えてくれます。イベント開催を通じて団体の広報もでき、露出度アップや認知度の向上も期待できます。スタッフが、プロジェクト運営やボランティアマネジメントの経験を積む絶好の機会ともなります。しかし、イベント開催には労力や費用がかかることから、ファンドレイジングとしては失敗、時には「赤字」に終わってしまう可能性もあります。イベント自体からの収益、イベントを活用した支援者拡大など、イベントがファンドレイジングにもたらすものを明確に想定して、それを達成するための計画をきちんとたてて取り組みたいものです。