お金についての5つのタブーを捨てよう!

「社会を変えるための資金を集めなくてはならない」と思いながら、心のどこかで「お金の話は嫌だ。」と思っていたら、その気持ちは相手にも伝わってしまいます。お金についてのタブーは子どものころから心に定着していたり、社会の中で暗黙の了解として共有されていたりします。そこで、ファンドレイジングを始める際に克服すべき5つのタブーについて考えます。

  1. okane-fusigiお金は汚いものだ
  2. 寄付するようなお金持ちは身近にいない
  3. 子どもはお金の話をするべきではない
  4. 寄付集めは「お金をください」と頭を下げること
  5. 良い活動をすれば、お金は自然に集まる

実は、ファンドレイジングに取り組む際に障害となるのが上記の1から5の考え方です。「どれも一般的に考えられていることで、そういうものだと思い込んできた」と思われるかもしれません。

では、ひとつひとつ、ここで考え直してみましょう。

1.お金は汚いものだ
人の手から手に渡されてくるなかで物理的な「汚れ」がついてしまった硬貨やお札を触った後に「手を洗おう」と思うのは誤りではありません。小銭を整理した手でそのままお握りを手にして頬張るのは衛生的に問題がありそうです。ここで問題なのは、お金というものの存在自体を「汚いもの」と思うことです。

米国で有能なファンドレイザーとして大きなNPOで活躍し、その経験からお金との向き合い方を著した世界的ベストセラー「ソウル・オブ・マネー」の著者リン・トゥイスト氏来日した際の講演会で、とても心に残る話をされました。「お金は水と同じ。流れずに一か所にたまっていたら腐敗する。でも、流れていれば、動植物を育み、美しい景観ももたらす・・・」と話されました。お金を一か所に溜めたり、流したりすることができるのは人間です。ファンドレイジングについて、「善意の資金循環」と表現することがあります。「困っている人を助けたい」、「社会をより良いものにしたい」という善意のこもったお金が社会で流れていけば、そのお金は美しい役割を果たすことができます。

ファンドレイザーは、そうした資金の循環の「橋渡し役」です。まずは、ご自身が「お金は汚いものだ」という思い込みを捨てていただければと思います。

2.寄付するようなお金持ちは身近にいない
寄付はお金持ちだけがするものではありません。たしかに大口の、例えば何万円、何十万円、何百万・・・といったお金を寄付できるのは限られた人かもしれません。でも、実際の寄付集めの現場では、「一口3000円からお願いいたします」といった集められ方が一般的です。また、団体の会員となった場合に年会費が1万2千円だとしたら、それを月割りで考えたら、一か月1000円の「出費」となります。

もちろん、様々な事情からそうした出費が無理な場合もありますし、ほかに使い道があるという場合もあるでしょう。

でも、ちょっと夕刻の繁華街を眺めてみてください。ごく普通の生活者の方々が食事をしたり、お酒を飲んだりしています。週末のファミリーレストランで家族連れで食事をしている人たちはいくら支払っているのでしょう。そうした出費額と寄付の金額はそれほど違わないのではないでしょうか。

「あの人はお金持ちじゃないから寄付なんてしないだろう」と決めつけるのは、とても失礼な考え方だとも言えます。寄付をするかしないかを決めるのは、ファンドレイザーではありません。

3.子どもはお金の話をするべきではない
「子どもがお金の話なんかするんじゃありません!」というふうに、お金のことを口にするのは「はしたない」と育てられた人は多いと思います。

実際、子どもが四六時中お金のことを考えていたとしたら、それはとても厳しい経済状況の中で苦しんでいるか、何か大きな不安を感じている深刻な事態によるものかもしれません。そうでない場合に、親は子どもに「お金のことは大人が考えること」と言うわけです。「けがれない子どもに、汚いお金のことを考えさせたくない」という親心なのでしょう。

でも、昨今は子どもたちへの金融教育の重要性が認められてきています。

「一億総中流社会」と言われ、右肩上がりに経済成長していた時代が終わり、終身雇用や年功序列型の賃金体系も崩れてきた今、個人の生き方が多様化する中で、一人ひとりの生き方に合ったお金の使い方や知識を身につける必要があると考えられてきたからです。社会に出てから自然と学んでいくというのでは遅すぎるということでしょう。

そして、金融教育の中には、お金の使い道の一つとして「社会貢献のために寄付する」ということも入ってきてしかるべきだと思います。寄付も含めたお金の使い道を親子で話し合う、教室で学ぶということが望まれます。

4.寄付集めは「お金をください」と頭を下げること
寄付集めを単に活動資金の調達だと考えると、「ください」とお願いするだけの行為になり、頭を下げてお願いするというイメージになります。ファンドレイジングの研修などでも、「お金を下さいというのが苦手で・・・」といった声を聞きます。

寄付は、社会の課題に取り組む団体を支援することで、課題の解決を推進させることが目的です。逆に言えば、自分は直接活動できなくても、社会をよくするためにできることはないだろうかと考えている人たちに、その機会を提供しているのがファンドレイザーだと言えます。

そう考えると、寄付を募る際には、頭を下げるのではなく、むしろ胸を張ってお願いしていいのではないでしょうか。寄付集めはペコペコ頭を下げてすることではないのです。

そして、自団体に共感して、理解して、選んで、寄付をしてもらったら、「ありがとうございます」と感謝の意を表して頭を下げていいのだと思います。それは、お金をくれたことへの感謝というより、社会を変えようという思いを団体に託してくれたことへの感謝なのです。

5.良い活動をすれば、お金は自然に集まる
ミッションの達成のために良い活動をすること、これは最も重要なことです。ただ、そうすれば自然と資金が寄せられると思うのは間違いです。

団体の取り組む社会の課題について気づいていない人もいます。気づいていても、その解決に取り組む団体を知らない人、知っていても理解していない人がいて当然です。そのために、NPOは課題解決活動と同時に、「伝える」使命を果たさなければなりません。社会とのコミュニケーションに努め、社会課題への理解と団体への共感、そして信頼を得て、初めて寄付などの支援行動に至るということです。

「自分たちの背中を見て応援してくれ」と望んでも無理だということです。「黙ってついてこい」もだめです。支援者への折々の報告によるコミュニケーションがあって、継続的な支援が得られるというものです。

時々、「この地域は民度が低いから活動が理解されなくて寄付が集まらない」などと嘆く声を耳にしますが、これはもってのほかです。団体の活動を理解してもらうための努力を怠っているのだと自戒していただきたいものです。