大口寄付について

ドナー(支援者)ピラミッドの解説をしていくと、その頂点部分に位置づけられる「大口寄付」について質問を受けることが多々あります。「運良く大きな金額の寄付がきた!」というのではなく、より積極的に大口寄付を受け入れていくためには何をしたらいいのか、考えてみます。

1.大口寄付はいくらのことか

100「大口寄付は何円からを意味するのですか?」と質問されることがあります。 実際、地域で草の根活動を行っている小規模な団体と、国際的に活動を行っている大規模な団体では、「大口」の意味は違うでしょう。

一般的には、最も多くの金額が寄せられている寄付メニューの単価のおおよそ100倍を意味すると言われています。寄付者を分析した結果、もし3千円の一般寄付をする人が最も多いとしたら、その100倍の30万円以上を、もし主な支援者が、年間1万円の会員で、それが一般寄付者よりも多いとしたら、その100倍の100万円以上が大口寄付となるということです。

2.大口寄付に取り組むための3つの準備

1)毎年の寄付収入の内訳を寄付金額の幅(=ドナーレンジ)で記録
自団体にとっての「大口」とはどのくらいなのかを見極めるために、過去のデータが役に立ちます。「100倍」の目安のためにも、さらに、これまで平均より多額の寄付をしてくれている人をピックアップして、大口寄付の依頼対象を絞るためにも、この作業は大切です。

2)情報収集
地域の経済状況、地域で経済的に余裕のある人たちはどこに住んでいるのか、何を求めているのか、こうした情報は、新聞や(富裕層を対象とした)雑誌、ネットで入手可能です。
おススメなのが、入場料が高めに設定された他団体のチャリティーイベントに行ってみること。どういう人たちが集まっているのか、どんな雰囲気なのか実際に見てくるといいでしょう。場合によっては、そこで知り合った人が新たな支援者となり、大口寄付者になってくれるかもしれません。

3)団体内の合意形成
大口寄付は必ずしも富裕層からだけのものではありませんが、経済的な余裕という点で富裕層から受ける可能性は大です。ここで、「金持ちにろくな人はいない」とか、「金持ちは社会の敵だ」というような偏見をもったスタッフがいたとしたら、寄付者との良好な関係は築けません。
また、何のために大口寄付を集めるのか、その目的と達成に向けた意思の共有も欠かせません。大口寄付を募るには、スタッフに通常の寄付集め以上の個別の問い合わせへの対応、丁寧なお礼や報告といった手間が求められます。理事にも大口寄付の可能性のある人を紹介してもらう、依頼のために足を運んでもらう必要があります。組織全体で大口寄付に取組むという合意形成が大切です。

3.大口寄付の対象となる人

1)これまでの大口寄付者
過去の大口寄付者は、団体を熱心に応援してくれていて、しかも経済的な余裕のある人だと推測できるので、大口の寄付の第一の対象となります。
ただ、過去の大口寄付者は、通常寄付者とは別格な立場の人たちなので、「また、よろしく!」と依頼状だけでお願いするというのでは、「一度大口寄付すると、たくさん寄付するのが当たり前だって思われて嫌だ!」と不快感を与えてしまいます。成功率の高い対象だけに、この人たちには、直接訪問して説明したうえで依頼するというような手間と時間をかける必要があります。

2)「寄付者ピラミッド」の下の段階の人たちのステップアップ
寄付者ピラミッドのなかで、くりかえし寄付をしてくれている人、会員として長年継続的に団体を応援してくれている人たちに、すなわち、「大口寄付」の一つ前の段階にいる人たちに依頼するのは効率的です。すでに団体への十分な理解もあり、信頼関係もあることから、「次の段階」に踏み出してもらえる可能性が高いからです。

ただ、ここで気を付けないといけないのは、「私は、一度にまとまった金額は出せないけど、自分なりにずっと団体を応援していこう」と考えて支援を続けてきた支援者に、「どうせなら、もっと出してくれ!」という感じのアプローチをしたら、それは長年の貢献を否定することになりかねません。最悪、これまで同様の支援をやめてしまうという結果を招いてしまうかもしれません。そこで、これまでの貢献に十分に感謝している旨を伝えつつ、丁寧な表現で依頼する必要があります。

3)富裕層をさがす
理事、既存の大口寄付者の協力も得ながら、地域の中で資産があって、団体が掲げているミッションに興味を持つ可能性のある人たちのリストを作成します。そして、その人たちに紹介してもらえる伝手を探して面会につなげます。あるいは、地域の富裕層が集まる場所、たとえば経営者の集いなどで団体のことを紹介する機会を得て、そこから個別の関係を築いていくのも一案でしょう。
いずれにしても、「お金持ちがすんでいそうな大きな家を見つけて、ベルを鳴らして大口寄付を依頼する」というのは現実的ではありません。何らかの接点を探して、そこからアプローチをしていく必要があります。

最後に・・・大口寄付者も少額寄付者も、団体の支援者としては同じように大切な存在だということは忘れないでください。金額の多少によって対応に差を付ける(お礼状の内容や感謝の表し方)ことは間違いではありませんが、大口寄付が寄せられるような団体ほど、少額の寄付者についても謝意と敬意と報告の義務をきちんと表しているように思えます。