日本の寄付に必要な5つのこと


日本ファンドレイジング協会の「寄付白書2013」によれば、2012年の日本の寄付市場における個人寄付の総額は6,931億円です。一方、アメリカにおける同年の個人寄付総額は2,289億ドル。当時の為替レートを1ドル=80円だとすると約18.3兆円になり、日本の約26倍となります。また、2011年のイギリスの個人寄付額は93億ポンド。1ポンド=128円だとすると1.2兆円。こちらも日本の1.7倍となります。個人の平均寄付支出額を見てみると、日本が15,457円(2012年)、アメリカは175,640円(2012年)、イギリスは41,472円(2011年)とかなりの差があります。

今もよく耳にする「日本の寄付は欧米に比べてまだまだ・・・」という声は、こういう数字に表れています。そこで、日本の寄付がもっと進むためには何が必要なのか考えてみます。

1.NPOのファンドレイジング力の向上

寄付市場の拡大には支援を集める側の努力が必要です。その基本は「伝えること」。「良いことをやっているのだからわかってもらえるだろう」というのではなく、解決を目指している社会課題、その解決にどう取り組んでいるか、どのような成果を上げてきているのか…それをわかりやすく伝えて共感を得ていくことが必要です。そして、人材、予算などの資源に限りのあるNPOだからこそ、効率よくファンドレイジングを行う必要があり、そのためのノウハウやツールの活用が不可欠です。

2012年に日本ファンドレイジング協会による認定ファンドレイザー制度が開始し、ファンドレイジングについて体系的に学ぶ仕組みが整いました。各地でファンドレイジングに関するセミナー等も開催されています。そういう機会を活用してファンドレイジング力を磨いていくことが求められます。

2.NPOの信頼性の向上

寄付とは、自分の大事なお金をNPOに託すものですから、そのNPOを信頼していなければできません。そこで、NPO自身の情報開示の姿勢が問われます。寄付金の使途をきちんと報告する、事業・会計報告をきちんと行い、それをわかりやすく公開することが必要です。

加えて、「この団体なら“できる”」と信じてもらうことも必要です。そのためには、事業計画、その進捗、成果を伝えていくことも欠かせません。

また、「団体の顔が見えない」というのも不安材料となります。ホームページなどで職員の活動風景や受益者のメッセージなどを公開していくことで「顔の見える団体」になることが大事でしょう。

 3.寄付市場の可視化とルール化

株式市場をイメージしてください。株式市場にはルールがあって、また、刻一刻と変化する株価は新聞やテレビで誰もが知り得るものです。そうした環境があるから、アマチュア投資家も株式投資をしてみようかと思えるわけです。寄付を「未来への投資」だと考えたら、その市場には可視化とルール化が必要です。日本ファンドレイジング協会では「ファンドレイジング行動基準」を公開しています。そうしたルールが一般化されていくことで、誰もが安心して寄付のできる環境が整うのだと思います。

可視化については、日本ファンドレイジング協会の「寄付白書」が継続的に統計調査することで、寄付市場の可視化に取り組んでいますが、個々の団体においても「どういう人達が、どういう気持ちで、いくら寄付をしてくれているのか」を明らかにしていくことで「それなら自分も…」という気持ちを抱いてもらうことにつながるでしょう。

 4.寄付教育

日本ではボランティア教育は行われるようになりましたが、寄付に関する教育はほとんど行われていません。フィランソロピー社会はボランティアと寄付の両輪で進んでいくといわれています。日本の将来的な寄付市場の拡大のためには「未来の寄付者」を育てることが重要ではないでしょうか。全国の公立小中学校で寄付についての授業、そして体験ができるようなカリキュラムが実施されることが望まれます。

実は、2月14日には「寄付教育オープンシンポジウム2015」が開催されます。 寄付教育の第一人者インディアナ大学のドゥワイト・バーリンゲーム氏を招いて、日米の寄付教育の全体像を示し、全国のさまざまな寄付教育プログラムを一堂に集めて紹介する日本で初めての場です。関心の高まりが期待されます。

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5.寄付金控除の年末調整対象化

確定申告をしないサラリーマンが寄付控除を年末調整で受けられるようになればいいということです。NPO側からの税制改正要望が出されていますが実現していません。源泉徴収の制度がある以上、寄付金控除の年末調整対象化が実現することが望まれます。

実は、平成27年4月1日以後に行われる「ふるさと納税」(好きな自治体に寄付をすると寄付のお礼として特産品等が贈られ、寄付金の証明書が送られてくるというもの)には、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が適用され、元々確定申告をする必要がない人で、かつ「ふるさと納税」の納付先が5つまでの人は、確定申告をしなくても自治体間で寄付金情報を共有することで、住民税で還付してくれるという仕組みと制度ができました。ぜひとも税額控除対象のNPOへの寄付についても、確定申告をしなくても年末調整で還付されるようになればと願っています。

そもそも、税というのはその国のありようを示すものです。住宅ローン減税では、サラリーマンの場合は勤め先の年末調整で還付されます。これは、広く国民が快適な住まいを有することを国が奨励していることに他なりません。寄付をすることを国が奨励し、それを企業も後押しする社会であるためには、ぜひとも、希望者には年末調整の還付が受けられるようになればと思います。

以上の5つが実現した時、日本の寄付市場は大きく拡大するのではないでしょうか。