遺贈寄付〜これだけは欠かせない6つの準備〜


個人が死亡した時に、遺言によって、財産の全部又は一部を相続人又は相続人以外の人に贈与(譲渡)することを「遺贈」といいます。少子高齢化の中で相続人のいない人も増えており、人生最後の社会貢献としてNPOなどに遺贈することが増えていくと予想されます。そこで、NPOが遺贈寄付を受けようと考えた際の準備を「6つのステップ」で考えました。

ちなみに、2015年11月13日の政府税制調査会で公開された「中間整理案」には、「税を通じた再分配だけではなく、遺産による寄付等を促進するなど、遺産を子・孫といった家族内のみで承継せずに、その一部を社会に還元することにより、次世代における機会の平等や世代内の公平の確保等に資する方策を検討することが重要である。 」の一文が盛り込まれています。今後、遺贈に関する諸制度がこれまで以上に「遺贈推進」につながるものに改正されていくことも期待されます。

そこで、遺贈寄付〜これだけは欠かせない6つの準備とは・・・〜

ステップ1.団体内の合意形成
遺贈は、平素の支援者との関係構築の「ゴール」だとも言えます。団体内で遺贈も視野に入れた支援者とのコミュニケーションをしなくてはうまくいきません。支援者から「遺贈」という言葉が出た時に、悪気はないものの「まだ早いですよ」みたいな受け答えで終わらせてしまっては、ややもすればデリケートな話題なだけに、せっかくの善意を遮断してしまいます。

遺贈を検討する中で、団体のトップと直接会って意思を伝えたい、あるいは、将来の活動成果について話を聞きたいと思う人もいます。スタッフからトップまでが遺贈の受け入れについて、それぞれの立場できちんと関わっていこうという合意が求められます。

ステップ2.遺贈についての担当者を決める
遺贈について検討していて団体に問い合わせてくる人の多くは、遺言の書き方、相続に関する法律や税金のことを知りたいと思っています。あるいは間違った知識で遺贈を考えていたりもします。そういうことにきちんと答えられるスタッフがいることで信頼を得て、実際の遺贈に向けた一歩も踏み出だしてもらえます。

また、老後の問題、家族の問題、死について・・遺贈に関する相談は時には「人生相談」の様も呈するので、ある程度の人生経験のある人が対応したほうがいいでしょう。

そして、遺贈という大きな決断に至るまでには何度か相談をすることもあり、そのたびに違うスタッフが対応するというのでは信頼関係が築けません。

さらに、遺贈を受けた場合の遺族への対応などもきちんとせねばなりません。そこで、遺贈のプロセス全体に対応できる担当者を決めておく必要があるのです。

ステップ3.遺贈に関する基本的知識を得る
上述の担当者には、遺贈に関する基本的な法律、税制の知識が求められます。また、相談対応だけでなく、実際に遺贈を受ける際には手続きもしなくてはなりません。担当者が決まったら、関連図書を通じて、あるいは各種セミナーなどに参加して知識を得るように努めなくてはなりません。

認定NPO法人の場合、特定非営利活動にかかる事業費に充てた額が受入寄附金総額の7割以上であることという「7割要件」、公益法人では公益目的事業収入がその実施に要する費用を超えないようにという「収支相償の要件」がありますが、大きな金額の遺贈を受けて要件を満たせなくなる場合でも、適切な会計処理によって解決できます。このような受け入れ後の知識も欠かせません。

実は、昨年8月、弁護士、税理士、公認会計士、行政書士、信託銀行担当者、NPO担当者など専門家が集まり「遺贈寄付推進会議」が立ち上がりました。(私もメンバーです。)議論の結果、遺贈の推進には遺贈寄付相談に対応できるアドバイザーを育成する研修が求められるとし、すでに東京で研修を開催しました。今後、各地で開催していきたいと考えています。こうした研修に参加されるのもいいでしょう。

ステップ4.専門家との連携を図る
基本的知識を持ったとしても、遺贈については個々のケースで難しい問題が生じる場合もあります。法定相続人がいる場合の遺留分、包括遺贈の場合の債務、不動産や株式等の遺贈を受ける場合のみなし譲渡課税など、これらへの対処には、税理士、弁護士などの専門家の力をかりる必要も出てきます。

また、相談してきた人が遺言を書く際に、また遺言執行者の指定にあたって専門家の紹介を希望されることもあるでしょう。

もし、そういう専門家とのつながりがない場合は、
NPOのための弁護士ネットワーク」や「NPO会計税務専門家ネットワーク」のようなネットワーク組織に地域の専門家を紹介してもらうことができます。

ステップ5.遺贈についての案内パンフをつくる
そもそも遺贈とは何なのだろう、どうやったらできるのだろうかといった知識を持っている人は多くありません。自分の死後に資産の一部あるいはすべてを寄付してもいいと考えていても、知識がないことから実行に至らない人たちがいると思われます。そこで、基本的な知識を簡単にまとめたパンフレットを用意して、団体のホームページでダウンロードできるようにする、問い合わせに応じて送付する、相談の際に説明資料とするといいでしょう。

また、このパンフをつくることで内部の遺贈に関する知見が整理される、あるいはその作成過程に協力してもらうことで専門家とのつながりができると思われます。

参考までに、社会福祉法人中央共同募金会のパンフレットをご紹介します。中央共同募金会では、遺贈・遺産の寄付を「はなみずき」と称してパンフレットのタイトルにしています。ちなみに、はなみずきの花言葉は「私の思いを受けてください」だそうです。

ステップ6.遺贈を受け付けていることを表明する
ここまでのステップで準備が整ったら、「遺贈を受けている」ことをホームページや団体パンフや機関誌などで表明します。団体から個人に対して積極的にアプローチするのが難しいテーマだけに、関心を持ってくれた人が「問い合わせ」をする方法と担当者名も明記しておきましょう。

そもそも「遺贈」という言葉自体が身近なものではない中で、「こういう支援の方法もあるのだなあ」と知ってもらうことが大切です。

重要なのは、遺贈寄付というと、全財産などの多額な金額を寄付することをイメージされる方が多いのではないかと思いますが、金額の多寡は自由だということを明記することです。

遺贈を積極的に受け入れている、認定NPO法人国境なき医師団の遺贈について案内しているページを参考までに紹介します。遺贈による寄付の方法と手続きの流れが簡単に示され、問い合わせや資料請求もできるようになっています。 http://www.msf.or.jp/donate/legacy/izo.html

ID-100235879さあ、これで準備は整いました。遺贈は究極の寄付と位置づけることができます。ただ、多くの場合、その寄付は団体との長年の関係の最後に到達するものだと思います。遺贈寄付についても平素の丁寧な支援者コミュニケーションが大事だと意識しながら、遺贈寄付の獲得にチャレンジして下さい!